旧校舎の魔女(1)
どこからかピアノを弾く音が聞こえてきていた。
おそらく現校舎の音楽室で合唱部がコンクールに向けた練習をしているのだろう。
しかし、音が旧校舎の方まで聞こえてくるというのは珍しいことだった。
旧校舎の三階。本来であれば生徒の立ち入りは禁止されている区域であったが、そこには三名の女子生徒の姿があった。
夕暮れの旧校舎。誰もいない教室に集まった三人は、カーテンが閉められた薄暗い部屋で、ヒソヒソと小声で囁き合っている。
「ねえ、あの噂は本当なの」
「わたしも聞いたわ。どうなのよ」
「……本当よ」
「だったら、わたしたちにも教えてよ。友達でしょ」
「もちろん、あなたたちとは友達よ。でも、友達だから教えないの」
「なにそれ」
「願いを叶えるには、それなりの代償が必要なのよ」
「え……」
「もしかして……」
「そう。彼女は願いを叶えてほしいって頼んできたわ。でも、ただでは願いというのは叶わないのよ。何かしらの代償が必要なの。だから……」
「嫌よ、そんなの無理」
「じゃあ、諦めることね。代償が払えないというなら」
「待って。わたしはやるわ。お願い」
「ちょっと、やめたほうがいいわよ」
「邪魔しないで。わたしはやるって決めたの」
「でも……」
「喧嘩しないで。わたしにとって、ふたりとも大事な友だちよ」
「ごめん」
「いいの。わたしも言い過ぎたわ」
「じゃあ、代償はどうする」
「……妹がいるわ」
「え……ちょっとあなた……本気なの」
「……本気よ」
「じゃあ、決定ね。明日の深夜二時、場所はここ。他の誰にもこのことを話してはならないわ。あなたもよ」
「もちろんよ」
「わかったわ……」




