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メガネの探偵、二階堂  作者: 大隅スミヲ
廃病院の噂と異界の門

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廃病院の噂と異界の門(4)

 廃病院は取り壊され、新しく老人介護施設が建設されるという。

 その情報を持ってきたのは、依頼人になりかけた市議会議員だった。もう少しで破格の値段で依頼を請け負うはずだったのだが、その話は今回の件が解決したということで流れてしまった。

 財宝を狙う賊。それを利用したのは、あの廃病院に集まってきていた低俗霊たちだった。低俗霊たちは匿名掲示板に入り込み、様々なウマい話を書いては人間たちを取り込もうとしているのだ。

 今回はたまたま、その場所に財宝を守るために亡霊となった軍人がいたというだけであり、他の場所ではうまく人間に取り憑き、様々な悪事を働いていたりもしているようだった。

 軍人は、今回のようなことが二度と起こらないように廃病院を別の施設に建て替えるように要求してきた。何とかしてみよう。二階堂はそう軍人に伝えて、その場を立ち去ったのだった。


「ねえ、先生。きょうは餡蜜あんみつも食べていいの?」

「ああ」

 いつもの喫茶店には二階堂とヒナコの姿があった。餡蜜を目の前にしたヒナコは嬉しそうに、ニコニコと笑っている。その姿はあの日に見せたような平安装束ではなく、紺色のワンピースに前髪ぱっつんというスタイルであり、みようによっては子どものようにも見えた。

「でもどうして、きょうは餡蜜を食べてもいいの?」

「いつも頑張っているヒナコにご褒美だよ。臨時収入も入ったんだ」

「りんじしゅうにゅう?」

「ああ」

 二階堂はヒナコの言葉に相槌を打ちながらブラックコーヒーを飲んだ。


 ある日、二階堂を訪ねてきた人物がいた。

 その人物は老人だったのだが、二階堂に「父が世話になったようで」と告げて封筒を差し出してきたのだ。封筒の中には帯付きの札束が入っていた。心当たりのない二階堂は、封筒を受け取れないというと、その老人は笑ってみせた。

「父は陸軍で特別な任務に就いていました。そんな父が毎晩のように私の枕元に立つんですよ。二階堂という人にお礼をしろって。最初は夢だろうと思って無視を決め込んでいたのですが、さすがに毎晩立たれると、私の方も気が滅入ってしまいましてね。どうか、受け取ってはくれませんか」

 そう老人が言った時、老人の背後にはあの軍人の姿が見えた。もちろん、あの時のような戦闘態勢ではなく、どこか優しそうで、そして威厳に満ちた顔をしていた。

「そう言われるのでしたら」

 二階堂はその封筒を受け取った。封筒の中身は新しく介護施設が出来た際に、そこがかつて陸軍の施設であったということを示す石碑を建てるために使うことにした。このくらいのことをしてやってもバチは当たらないだろう。



メガネの探偵、二階堂 ~廃病院の噂と異界の門~ 了

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