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猫鳴トンネルの怪(6)
トンネルから出てきた二階堂の姿を見たタクシー運転手は、ほっとした表情を浮かべた。
「終わったんですか?」
後部座席のドアを開け、中へと入ってきた二階堂へ運転手が問いかける。
「ああ。最初からこのトンネルで事件なんてなかったのさ」
「良かった。これで観光客も戻ってきますよね」
「そうだな……」
二階堂がそう答えると、タクシーはトンネルの前でUターンをして来た道を戻ろうとする。
「そういえば、麓に温泉があるそうだな」
「ええ、美肌の湯って言われていて、若い女性とかがよく来ていますよ」
「そうか。じゃあ、そこへ向かってくれ」
二階堂はそう運転手に告げると、隣に座るヒナコのことを見た。
疲れてしまったのか、ヒナコは二階堂の肩に頭をもたれかけるようにして眠ってしまっている。
その顔は少女のようであり、とても優しい顔だった。
「ありがとう、ヒナコ」
二階堂は微笑みながら呟いたが、タクシーの運転手からは後部座席のシートにひとりで座る二階堂の姿しか見えていなかった。
猫鳴トンネルの怪 了