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第7話 魔法少女の思いを知る

 転生してから初めての休日。いきなり女の子二人と出かけるという、雲よりも高いハードルを俺は飛び越えなければならない。


 俺はなるべく二人と過ごすことに決めたけど、もし嫌われてしまうと、近くにいられなくなってしまうかもしれない。

 とにかく好感度が下がらないように気をつけよう。


 もう一度身だしなみチェックだ。


 髪型:普通(俺基準) 顔:普通(俺基準)服装:普通(俺基準)


(よし、完璧だ)


 普通。こういうのは普通でいいんだよ。変に背伸びをしてもボロが出るだけだ。



 買い物が目的ということで、待ち合わせ場所はショッピングモール。複数のエリアに分かれており、一日で全ての店を見てまわるのは難しい。

 敷地内の屋外には噴水があり、訪れる人達の待ち合わせの目印になっている。


 よく晴れた五月の暖かな陽気を感じていると、見慣れた女の子二人組が近づいて来るのが分かった。


「ごめん! 遅れちゃったかな?」


「約束の時間には間に合っているはずよ」


「全然遅刻じゃないよ。俺も今来たところだから気にしないで」


 こういう時は確かそう言うのが正解だったよな? ふぅー、調べておいてよかったぜ。


 待ち合わせ時間は正午だけど俺が到着したのは、その一時間前。正直に言った方がドン引きされかねない行動だろうな。

 でも遅刻とか好感度が下がるようなことはダメ、絶対。


 桜野さんはピンク色のシャツに、白色のふわっとしたひざ丈スカートで、可愛らしい感じがピッタリだ。


 蒼月(そうげつ)さんは薄い青のブラウスにベージュのパンツというパンツスタイルで、女の子らしくありながらも、落ち着いた印象を受ける。


 ショッピングで荷物ができる前に、まずはランチタイムということで、レストランに入った。


 四人がけのテーブル席に着き、対面の左に蒼月さん、右に桜野さんが座る。


 注文を終えると、蒼月さんが席を外した。それを見た桜野さんが、真剣な様子で俺に話しかける。


「ねえ一条くん、やっぱり最近の氷奈(ひな)、時々ボーっとしてることがあって。まるで何か考え込んでるみたいな。一条くんはどう思う?」


 どうしよう、心当たりがありすぎる。そりゃあ蒼月さんからすれば、フード付き漆黒のローブを身にまとった、怪しい仮面をつけた奴に助けられたら気になって仕方ないだろう。


 でもなぁ、あの宝石を使わせないようにするためには、俺が戦って姿を見せる必要があるんだよなあ。


「確かに俺もそう思う時があるよ」


「やっぱりそうだよね。だから私、今日は氷奈にそれを忘れるくらい楽しんでほしいから、最後まで付き合ってね!」


「もちろん! 俺でよければ」


 そして蒼月さんが戻って来て、今度は入れ替わりで桜野さんが席を外した。


 俺と蒼月さんの二人きり。これはマジで困ったぞ。何を話せばいいんだ? レストランにいるんだから好きな食べ物とか聞いてみるか?


「一条君、誰かに言われた言葉がずっと頭の中で残ったりしたことがあるかしら?」


「えっ?」


 唐突な質問に思わず聞き返してしまった。蒼月さんが言っているのはおそらく、変身した状態の俺が蒼月さんに向けて言ったセリフのことだろう。


 もう桜野さんにあの宝石を使わせてはいけない。次からは俺がその役目を引き受ける。という意味のセリフだ。


「いきなり変な質問をしてごめんなさい。桃華(とうか)は本当にいい子で、私の大切な友達なの」


「そうだね、俺も本当にいい子だと思うよ」


「だから桃華のためなら私ができることは何でもしようと思うのは、おかしなことじゃないわよね?」


「おかしなことなんて何もないと思うよ」


 魔法少女としてじゃなく、一人の友達としてお互いを思いやる、いい関係だな。


 桜野さんが戻って来たので注文の品を待つ。ところがランチタイムは中断を余儀なくされた。


 背筋がゾクっとするようなこの感覚。まさか……!?


 怪異というのは人の負の感情から生み出される。よって、人が多く集まる場所ほど発生しやすい。なので学校やショッピングモールがそれに当てはまる。だとしても、だ。


(飯時ばっかりじゃねえかあぁぁ!)


 二人が席を外して少しすると結界が張られたので、俺も変身した。


 もしもまた怪異が現れたら決めていたことがある。それは二人の前にしっかりと姿を現すこと。


 そして俺が怪異を回収して、二人にこう告げるんだ、「もう戦うな」と。


 前回の戦いでは桜野さんは気を失っていたので、まだ俺の姿を見ていない。それに蒼月さんにもしっかり説明しないと。


 さあ、ハッピーエンドを作り始めるとしようか。

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