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第68話 長い時間

 俺はこれまで桜野さん、蒼月(そうげつ)さん、陽山(ひやま)さんにナイトであることを打ち明けた。そして俺が緑川さんを最後にしたのには理由がある。


 前に五人で海に行った時、アニメだと第八話の水着回。俺は緑川さんと二人きりになり、真っ先に海の中へと向かう三人を眺めながら話をした。


 その時に緑川さんから、「二人で出かけたい」と誘われたんだ。そして俺は「俺から連絡する」と返事をした。

 それを聞いた緑川さんは笑顔で「はいっ! 私、待ってますねっ!」と言ってくれたんだ。それが本当に嬉しくて、絶対に魔法少女達を救おうと改めて決意することができた。


 ハラグロのことであやふやになってしまっているけど、このまま何もしないなんて、いくら俺でもありえない。


 今は夜8時なので、何も問題ない時間帯のはず。俺はスマホのメッセージアプリを起動して、緑川さんと二人きりのトーク画面を表示させた。


 そこには緑川さんのお父さんの誕生日プレゼントを一緒に買いに行った日の夜にやり取りした、お礼メッセージが残されていた。


 それが一ヶ月くらい前だから、そのままそっくり一ヶ月くらい連絡をとっていなかったことになる。その時はまだ魔法少女達を解放することが最優先だったからだ。


(電話よりもメッセージのほうがいいはずだ)


 きっとそのほうが緑川さんにも考える時間ができていいと思う。

 まあ電話だと俺のほうが緊張して上手く話せないってのもあるけど。


 俺はスマホを持ち、メッセージを送信した。


『こんばんは。いきなりだけど、海で話したこと覚えてるかな? 二人で出かけるって話だったんだけど』


(頼むーっ! 返信来てくれー! 既読スルーだけはご勘弁を!)


 そんな祈るくらいなら電話にしなさいよって感じだけど、それができない俺なんです。


 そして待つこと30分。スマホに通知が。緑川さんからだ。


『遅れてごめんなさい! お風呂入ってました。私、お風呂の時にスマホは持ち込まないんです。海でした話、もちろん覚えてます!』


 なるほど、緑川さんは風呂にスマホは持ち込まない……っと。これでまた緑川さんの一面を知ることができた。


(違う、そうじゃない!)


 それを知ったところでどうするって話だ。緑川さん、あんまりそういうことは言わないほうがいいんじゃないかな。


『よかった。それでその時の約束を果たそうかなって思ってるんだ。二人で夏祭りに行かない?』


 五人で海に行った帰りの駅で、夏祭りの案内ポスターを見かけたんだ。それを見た俺は、緑川さんを誘おうと決めていた。


 送信してから10分が経ったが、返信は無い。


(なぜだ! 俺は何か重大なミスをしたのか!?)


 さらに待つこと10分。アプリからの通知が届いたので秒で確認すると、緑川さんからだった。


『私でよければお願いします!』


(緑川さんと行きたいから、こうして誘ってるんだけどなぁー。どうする? 思い切ってそれも送信してみようか?)


 俺は意を決してその言葉も送信することにした。


『もちろん。俺は緑川さんと行きたいんだよ』


(ちょっと正直すぎるかな?)


 それから10分が経過。返信は無い。


(うおおぉー! ミスった! 取り消したい!)


 そう思ったけど、すぐに返信が届いた。


『嬉しいです。楽しみにしてます』


(よかったあぁぁー!)


 それはほんの一行だったけど、俺は嬉しくて仕方がなかった。


 そして俺は決めたんだ。緑川さんと会ったら二つの告白をしようと。

 一つめは俺がナイトだということの告白。そして二つめは、恋愛としての告白だ。



【同時刻】


SIDE 緑川 若葉


 夏休みになったけど、一条さん約束覚えてくれているのかな? 聞いてみたいけど、一条さんから連絡をくれるって言ってたし、私からは連絡できないよね……?


(あっ、お風呂に入ってた間にメッセージが届いたみたい。小夏さんかな? えっ、一条さんから……!)


 驚いた私はすぐに時計を見た。


(30分も待たせちゃってる……! すぐに返さなきゃ!)


『遅れてごめんなさい! お風呂入ってました。私、お風呂の時にスマホは持ち込まないんです。海でした話、もちろん覚えてます!』


(これで大丈夫かな? 一条さん怒ってないかな? お願い、返信来て!)


 私はそう願った。返信を待つって、こんなにもドキドキするものなんだね。

 そして私のお願いが叶ったようで、一条さんからメッセージが届いた。

 

『よかった。それでその時の約束を果たそうかなって思ってるんだ。二人で夏祭りに行かない?』


 約束、覚えててくれた……! すぐに返信しなきゃ! でもどんな言葉にしよう? こういう時どうすればいいのか分からないよ。


(あっ、もうこんなに過ぎて……! 嫌われたらどうしよう!)


『私でよければお願いします!』


 ただそれだけの言葉を返すのに、20分もかかっちゃった……。返信、来るのかな?


『もちろん。俺は緑川さんと行きたいんだよ』


 えっ、それって……? だけどまた返信に困っちゃうよ。


 そして気がつけばまた10分が過ぎていた。


『嬉しいです。楽しみにしてます』


 ここまで時間をかけたのに、出てきた言葉はほんの一行だった。


(たったこれだけなのに、どうしてこんなにも時間がかかっちゃうのかな……? 小夏さん達ならすぐに返せるのに)


 それは私にとって今までにない感覚だった。


(今年の夏休み、特別になるのかな……?)

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