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第52話 第二期

 夏休み前日の夜八時、俺は自分の家で変身をした。目的はハラグロを呼び出すため。

 できることなら七月中にはハラグロとの決着をつけたい。なぜなら夏休みには予定がいっぱいあるから。……桜野さん達には。


 せっかくの楽しい夏休みを、いつ始まるか分からない怪異との戦いで邪魔させるわけにはいかない。


 俺は右手のひらを上に向けて、あの宝石を具現化した。片手で収まる大きさのそれは白く光り輝いていて、この中に膨大な負の感情が溜まっているとはとても思えない。


 万が一ハラグロに奪い取られることがないようにしっかりと握り、このまま待ってみることにした。まるで釣りをしているような気分だ。


(他に方法が思いつかないからこうしてるけど、これだけで来るのかどうか)


 そして待つこと数分。つけていたはずの部屋の明かりが消えて、空中にぼんやりと赤い光が二つ浮かび上がった。どうやら獲物が食いついたらしい。


 いつもは俺が眠りについた瞬間を見計らったかのように、いつの間にかハラグロが来ていた。だから分からなかったけど、めちゃくちゃ恐い登場の仕方だな……。こんなの怪奇現象じゃないか。


「やあ、一条 早真(そうま)君。君は何をしているんだい?」


「何ってほどでもないけど、これって何にどう使う物なんだろうと考えていたんだ」


「知っての通りだよ。それには人の負の感情がたくさん詰まっている。そしてそれは莫大なエネルギーとなるんだ」


「どうして負の感情なんだ?」


「例えば人は怒るよね。そしてその感情は時に他人を傷付ける凶器となる。きっかけと言った方が正しいかな。もしもそれを一箇所に集めることができれば、それ自体が攻撃力を持つようになるんだよ」


 確かに『ついカッとなって』ということは誰にでも起こりうること。怒りというものは、時として人に思いもよらない行動を取らせることがある。それほどに強い力を持つ感情だ。

 実際、怒るって結構エネルギーを使うことだと思う。


「それ自体って、集めた負の感情のことか? それに攻撃力を持つとはどういうことだ?」


「そうだよ。そして攻撃力を持つとはそのままの意味さ。例えばその力を解放して何かを破壊する、とかね」


「そんなことができるのか。ということはその力を使って世界を救うということだな?」


「そうだよ」


 ハラグロは淡々と返事をした。まったく、よく言えたもんだ。お前が言う『世界』とは『この世界』のことじゃないくせに……!


「それでこれをどう使うつもりなんだ?」


「さっき言った通りだよ。破壊するのさ」


「この世界の何を破壊するんだ?」


「この世界そのものだよ。正確にはこの惑星にあるもの全て、かな」


 あまりにも想定外の言葉に、俺の思考は少しの間だけ停止してしまった。


「お前は何を言っているんだ?」


「創造の前には破壊が必要だからね」


 つまりハラグロはこの世界を侵略しようとしている……?


 アニメでは桜野さんが闇堕ちしかけて、それを他の三人が必死で止め、桜野さん自らが精神だけを現実とは別の世界に隔離するところまでが第一期だった。

 そしてハラグロがそれに関わっていることまでは分かっていた。


(もしかしてこれは第二期の内容なのか?)


 だとすると、予想以上にハラグロの目的が酷かった。冗談じゃない! さすがにそれは許されない。

 尚更もたもたしてるわけにはいかなくなったじゃないか。


 本来なら今すぐにでもハラグロをどうにかしないといけないだろう。

 だけど彼女達に魔法の力を授けたのはハラグロだ。もしハラグロがいなくなれば、魔法少女達を解放することができなくなる可能性は高い。

 だから俺も今までハラグロに手出しできなかったんだ。でもこうなると、とにかく早く行動をしなければ。


 そう考えた俺は、改めてハラグロに言う。


「魔法少女達をその役目から解放してあげてほしい」

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