第37話 どう考えても魔法少女のほうが心が綺麗
俺が魔法少女達のリーダーになってから数日が過ぎた。
アニメ第七話ではハラグロが深夜に桜野さんの部屋に現れて、「調子はどうだい?」と聞くとともに、桜野さんにあの宝石を見せてくれと言う。
そして宝石を見たハラグロは、「ちょっと実際に見ておこうと思ってね。よかった、順調に溜まっているようだね」と、どこか満足げに話す。それを見た桜野さんは当然、「何が溜まってるの?」と問う。
するとハラグロは「君が集めた負の感情だよ。もう少しでこの宝石がいっぱいになるね」と返す。
それに付け足して「この宝石がいっぱいになった時、世界は救われ、君は魔法少女としての役目を終えることができるんだ」と告げる。
それを聞いた桜野さんの疑問は深まり、再度問う。「それってどういう意味?」と。
しかしハラグロはそれに答えず、立ち去ってしまう。去り際に「僕達には感情というものが無いし理解もできない。だから君たち人間が感情豊かでよかったよ」と意味深なセリフを残して。
それを観た視聴者は、「宝石がいっぱいになるとどうなるんだろう?」と興味をもち、さらにハラグロの発言の真意も気になり始める。
そんな感じで、作品の雲行きが怪しくなってくる第七話。
(果たしてハラグロは桜野さんのところに来たんだろうか?)
スマホで連絡をとるわけにもいかないので、俺が今できるのは質のいい睡眠をとって、ナイトとしての行動に支障が出ないようにすることくらいだ。目を閉じてゆっくりと眠りの世界へ……。
ところがそれを平気で粉砕してくるのがハラグロなのである。
「一条 早真君、起きてくれるかい?」
暗闇に浮かぶ真っ赤な目。もはや驚きよりも呆れるようになった。
「だから夜中に来るなって言ってるだろ」
「君に聞きたいことがあるからさ」
「答えになってないから」
「さっき聞いたんだけど、君は魔法少女達の怪異の回収を邪魔しているようだね」
その言葉を聞いた俺はすぐに気が付いた。桜野さんのところに行ったんだなと。
「邪魔だなんて人聞きの悪いことを言わないでくれ。俺は代わりに回収してるだけだ」
「君がそんなことをしなくても、彼女達に任せればいいじゃないか」
「確かにそれも一理ある。その一方でだな、正直に言って俺はどの魔法少女よりも強い。だったら俺が回収するほうが効率的じゃないか?」
これは俺のうぬぼれじゃない。俺が最強なのはハラグロのお墨付きだ。
「それなら怪異も君が倒せばいいんじゃないかな」
「そう言いたくなるのももっともだ。ただそれじゃ魔法少女達が成長しないと思うぞ。そっちとしても魔法少女に負けてもらっては困るんじゃないか?」
「ふむ、それはそうだね」
「それに俺だってそう毎回は間に合わないかもしれない。俺がいない間は魔法少女が戦うしかないからな」
「君の言いたいことは分かったよ。それなら今までに怪異を回収した証拠を見せてもらえないかな?」
「ああ、分かった」
俺はそう言うと変身した。そして右手のひらを上に向けて、イメージする。
すると桜野さんが持っているのと同じような宝石が具現化された。
桜野さんは常に持ち歩かないといけないのに対して、俺はそれを体内に収納しているようなイメージ。
そして桜野さんは宝石が無いと怪異の回収自体ができない。だけど俺にとって宝石はただの独立した貯蔵庫なので、同じように見えても持っている意味合いが少し違う。
かくいう俺も最初は右手から直接吸収したから、何か影響が出るんじゃないかと心配したもんだ。
「なるほど、確かに嘘じゃないみたいだね」
それを見たハラグロは納得したようだ。どうやら俺のは直接見ないと分からないみたいだな。
「まあ僕としては怪異を倒してくれるなら、誰が回収してもその量は同じだからね。合図は分からなくなるけど、確かに君のほうが彼女より受け止められる容量は大きいからね」
合図というのはおそらく桜野さんの闇堕ちのことを言っているのだろう。
それにしても桜野さんより俺の方が多くの怪異を受け止められるだなんて、確かその容量は心が綺麗なほど多くなるはずだよな?
俺、桜野さんよりも心が綺麗か……? とてもそうは思えないんだけど。
もしかして魔法少女が大好きだという思いが、純粋なものとして認識されたとか? 確かにそれだけなら誰にも負けない自信がある。
「それじゃこれからも頑張ってね。時々は様子を見に来るよ」
こうしてハラグロは去って行った。本来なら第七話は桜野さんとハラグロのやり取りメインの話だけど、例えるならCM前のAパート後半からCM明けのBパートが全部、俺とハラグロのやり取りになった感じだろうか。
こうして緊張を高めておいての次回予告が水着回なんだから、緩急がすごい。きっと第八話はそうなるんだろうな。
もしかして俺、魔法少女達と海に行くことになるんだろうか?