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第33話 頑張るギャル

 第六話の怪異は人の形をしており、あろうことか少女のような外見をしている。

 大きさも中学生くらいの女の子と変わりなく、服装も魔法少女のようなフリル付きの可愛い感じのものだ。


 こんな状況じゃなければ、とても怪異だとは信じられないほど。

 だけど、目も動かず口も開かず表情も変わらず、おおよそ感情というものが感じられない。


 それでいて攻撃方法はしっかり魔法であるというタチの悪さ。


「えっ? ただの女の子じゃないの? でも結界の中で色づいて見えるってことは、やっぱり怪異? ……まったく、これだから怪異ってのはタチが悪い。それで、どうやって共闘するつもり? 私、あんたと連携とれるとは思えないんだけど?」


「なに、簡単なことだ。安全な場所から遠距離魔法を放ってくれればいい」


 この怪異は遠距離魔法を防ぐための防御障壁を使ってくる。だから主な攻撃方法が遠距離魔法の陽山(ひやま)さんとの相性が悪い。


 少しの間だとしても怪異を自由にさせてはいけないので、他の三人が来るのをただ待つわけにもいかない。遠距離魔法もやがて魔力切れを起こす。


 アニメでは、それならばと陽山さんが怪異に接近して倒そうとする。

 だけど人型であるということと、見た目だけなら中学生くらいの少女を目の前にして、優しい陽山さんは攻撃することをためらってしまう。


 その一瞬の隙をつかれて、陽山さんは怪異の魔法剣で体を切りつけられてしまい、傷を負ってしまうんだ。


 これは完全に余談だけど、体を切りつけられたからといって、不自然に服がビリビリになってほんの少ししか残らないなんてことにはならない。

 このアニメが人気な理由に、下着が見えたりそういった要素が無いこともあると思う。そういうのは他の魔法少女アニメがやってくれるはず。


 怪異は俺達に気がつくと、陽山さんをめがけていきなり魔法弾を放ってきた。俺はとっさに陽山さんの前に出て、魔法弾でそれを打ち消した。


「あっ、ありがと……」


 いきなりのことだったのか、さすがの陽山さんも驚いているようだ。


 それから怪異は大きくバックステップをして、俺達からかなり距離をとった。

 もはやその姿は小さくしか見えないほど、遠くなってしまっている。


「いいか、少女の姿をしているがあれは怪異だ。だから攻撃するのをためらうんじゃない。それとあいつは防御障壁を使ってくるが、気にせず攻撃を続けるんだ」


「防御障壁って、若葉が得意にしてることじゃん……!? なんでそんなことが分かるの?」


「今は戦闘中だから手短に言うが、俺はよくない未来を知っている。だからそれを変えるために動いているんだ」


「それって前に言ってた桜野ちゃんのことだよね? ……って、今はそれどころじゃないか! 分かった、あんたの言う通りにしてみる。でもそんなに長くはもたないから!」


 陽山さんはそう言うと、魔法で杖を作り出し、安全な距離から怪異めがけて遠距離魔法を放つ。


 光だけで作られたような黄色に輝く剣のようなものが、怪異の頭上からいくつも飛んでいく。俺はそれを見て一気に怪異との距離を詰めていく。


 陽山さんの魔法は、怪異が作り出した緑色の防御障壁に当たると全て消えてしまっている。でも陽山さんは攻撃の手を緩めない。


(この姿の俺を信じてくれている……?)


 そして怪異のもとにたどり着いた俺は、走りながら溜めた魔力を至近距離から一気に解放した。

 怪異は防御障壁の維持に気を取られているのか、俺の攻撃に対処する様子はない。


 俺の両手から勢いよく出ている黒い波動のようなものが怪異に命中し、解放が終わると怪異が光っていたので素早く回収した。


 あっさり倒したように思えるけど、アニメではケガをした陽山さん以外の三人がかりでようやく倒せたほどに強い怪異だ。


 そして俺は陽山さんのもとへと戻り、声をかける。


「お前がいなければ、こう上手くはいかなかっただろう。礼を言う」


「あんたが言った通り、まさか怪異が防御障壁を使うだなんて……。もしかしてあんたはホントに——」


 陽山さんはそこまで言いかけると、フラつき倒れそうになった。それを見た俺は反射的に陽山さんを優しく抱きとめていた。


「大丈夫か?」


 俺がそう声をかけると、陽山さんはバッと俺から離れ、ばつが悪そうにはにかむ。


「ありがと。アハハ、ちょっと無理しすぎちゃったかなー?」


「すまない、俺が無理をさせてしまった。だが、あの怪異に近づくのは危険だったのだ」


「そうだね、分かるよ。だって私の魔法、全然効いてなかったんだから」


「少しは俺が言うことを信じてもらえただろうか?」


「そう……だね。桜野ちゃんに何かあってからじゃ遅いもんね」


 もしかするとこれで、桜野さんにも完全に信用してもらえるかもしれない。

 なんだかずいぶんと時間がかかったような気がするけど、信用を得るというのはそれほど大変なことなんだろうな。失うのは一瞬だというのに。


 そんなことを思っていると、早い足音が近づいてくるのが分かった。そして三人の少女が姿を現した。


「小夏さんっ! 無事ですか……?」


 陽山さんを心配する桜野さんの声。桜野さん、蒼月(そうげつ)さん、緑川さん。そして陽山さん。魔法少女が再び全員集結したのだった。

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