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第31話 ギャルを誘おう

 陽山(ひやま)さんにメッセージを送ることを決める前、俺は転生してからのことを振り返ってみた。


 今までは『アニメの内容はこうだったから、ここで待てばいいはず』とか、『いつの間にかアニメと同じ状況になってた!』など、受け身になっていた。果たして本当にそれでいいのだろうか?


 毎週欠かさず観ていたアニメ世界に転生したってことは、いわば未来を知っているということだ。


 だったら自分から行動してみれば、根本的に何かが変わるんじゃないだろうか?

 例えばアニメでは魔法少女達が傷つく場面を回避できるとか、そもそも怪異が出ないようになるとか。


 せっかくアニメ世界に転生したんだから、そのくらいのことはしてみるべきだ。

 というわけで俺は陽山さんに送るメッセージを入力していく。


 もちろんこれには理由があって、アニメの第六話は陽山さんメインの話。陽山さんの掘り下げ回ともいえる。


 なので陽山さんにスポットが当たり、陽山さんを中心に話が進んでいく。


 そんな中、第六話では陽山さんが一人で怪異と戦うことになる。陽山さんがたまたま一人で大通りを歩いていた時に怪異が出現するからだ。後から桜野さん達が駆けつけるものの、それまでに陽山さんはケガをしてしまう。


 それならば、もしもその時に俺が一緒にいたらどうなるのだろうか?


 怪異が出なければ良し、もし怪異が出ても俺がいるから一緒に戦うことができる。どちらに転んでも陽山さんがケガをしなくてすむ。

 だから多少強引でも、俺が陽山さんと一緒にいる理由を作り出す。


『陽山さん、今月最後の休日の昼って空いてますか?』


 これって最早デートのお誘いじゃないかと思いながらも、俺はそんなメッセージを送った。


 ほどなくして既読の表示が出た。そして返信待ちという、俺にとっては世界一緊張すると言ってもいい時間が流れる。


 きっとこの間に陽山さんはいろんなことを考えているんだろうなぁと、想像してしまう。


 数分ほど経った頃にアプリからの通知が届き、ホッと胸をなで下ろす。


『一条くん、どうしたの!? もしかして、私をデートに誘ってくれるのかなー? なんて、そんなワケないか! あ、その日ならちょうど空いてるよー。何かイベントがあったりするの?』


 うーん、これはどう判断すべきだろう? からかわれてる? どっちにしても、恋愛感情があるって感じではないよな。


『実はですね、行ってみたい場所があるんですけど一人じゃ心配だし面白くなさそうなので、よければ陽山さんにも付き合ってもらえればなって思いまして』


 俺がそう言って伝えた場所は、とあるアミューズメント施設。行ってみたいというのも本当だったりする。

 俺は基本的には一人が好きだけど、どこでも一人で平気ってわけじゃない。賑やかな場所で一人ってのは、さすがにキツい。


『なるほどー、確かに一人だと寂しいかもね。桜野ちゃん達は何て言ってるの?』


『実は桜野さんも蒼月(そうげつ)さんも緑川さんも、予定があるみたいで。あとは陽山さんだけが頼りなんです。決して消去法ではなくて、先輩だから誘いづらかったといいますか』


『そうなんだ?』


『はい。それに陽山さんが一番詳しいかなと思いまして』


 俺がそう返信すると、少し間が空いた。


 魔法少女全員を誘うのもいいかもしれないけど、変身した俺への陽山さんからの信用を得たいという思いもある。


 変身した俺が陽山さんから完全には敵視されていないのは、いわば蒼月さんと緑川さんのおかげであって、俺個人を信用してもらうのならば、二人きりになるのが一番なのかもしれない。


 だからこのタイミングでの既読スルーだけはやめて! それってドン引きされたってことだから!


 すると何とか返信が来たようだ。


『しょうがないなぁ。そういうことなら付き合ってあげよっかなー』


『ありがとうございます』


『それにしても一条君、意外と大胆だよねぇー』


 陽山さんには言葉じゃないほうが届くのかもしれない。だからもし怪異との戦いになったら、俺の強さをめちゃくちゃ見せつけてみよう。

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