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第29話 二人は何を思う

「若葉っ! 大丈夫? どこにいるの?」


 魔法少女に変身した陽山(ひやま)さんが、ダンジョン怪異の入り口でそう叫ぶ。


 怪異は出現場所を選ばない。毎回そう都合良く、魔法少女全員が集まっている時に出るとは限らないんだ。


 結界が張られたということはつまり、怪異が出たということ。それから魔法少女達は怪異の気配を頼りに駆けつける。

 魔法少女達はどうか知らないけど、俺は結界が張られる前に怪異の出現を察知することができる。


「若葉っ! いないの……? 待ってて、私もすぐ中に入るから!」


 それは心配と決意が混ざったような、とても弱々しく、でも力強い声。矛盾するようだけどそれはきっと、緑川さんのことを大切に思っているからこそなのだろう。


「待て、その必要はない。その若葉という少女ならこの通り、無事だ」


 俺がそう言って緑川さんを見ると、緑川さんは俺の横に並んで、元気な姿を陽山さんに見せた。


「小夏さん、私なら無事です……!」


「若葉っ……! よかった、ホントによかった……! 結界が張られたから怪異の気配を探ってみたらこのデパートで、確か若葉が行くと言ってたの思い出して、急いで駆けつけたんだ……!」


 陽山さんはそう言って、緑川さんを抱きしめた。


「小夏さん……! 私のために、ありがとうございます……!」


「何言ってんの、このくらい当たり前じゃん!」


 そして陽山さんは緑川さんを自分の後ろに行くよう促すと、緑川さんは素直に従った。


「あんた、なんで若葉と一緒にいたのか説明してくれるよね?」


 俺と向き合う陽山さんはさっきまでの優しい表情から一変して、俺を見る目は厳しい。なんか陽山さんには説明してばかりだけど、魔法少女全員から信用してもらうために必要なことだから、少しずつ時間をかけるべきところだな。


「もちろんだ。俺としてもそれで理解してもらえるなら、望むところだ」


 なんで緑川さんと一緒にいたのかってことなら、お父さんへの誕生日プレゼント選びに誘ってくれたからなんだけど、この姿としての理由はどう答えようか。


「だがその前にやるべきことがある」


 そう言って俺はダンジョン怪異を回収した。デパート全体から黒い霧のようなものが剥がれ落ちるような感じで、今までの怪異よりも時間がかかった。なかなかに規模が大きかったのだと分かる。


「そうそう、それだって桜野ちゃんしかできないことなんだよねー」


「そうだな。だからもうピンク髪の少女には怪異の回収は絶対にさせない。前に言っただろう? 俺の目的はピンク髪の少女を救うことだ」


「私も前に言ったよね? 私は蒼月(そうげつ)ちゃんを信じてるわけであって、あんたを信用してるわけじゃないって」


 俺がどう話を切り出そうかと考えていると、陽山さんの後ろに隠れるようにしていた緑川さんが口を開く。


「あ、あの……。この人は、急に怪異が出て一人で不安になっていた私を助けてくれたんです。この人がいなかったら私、きっと何もできなかったと思います……」


「そっか。若葉がそう言うのならそうなんだね」


 緑川さんの言葉を聞いた陽山さんは、さっきまでの厳しい表情ではなくなっていた。陽山さんにとってはそれが緑川さんの言葉というだけで、信用できるものなんだろう。


「そういうことなら、あんたにお礼を言わなきゃね。若葉を守ってくれてありがとう」


「気にしなくていい。俺はこれからも怪異が出れば駆けつけるつもりだ」


 そしてこの場は解散ということになった。陽山さんもここに残ると思ったけど、元々今日は都合がつかないから緑川さんに付き合えないということだったので、帰って行った。


 俺と緑川さんはデパートの中へ戻り、その後は改めてお父さんへのプレゼント選びをしたり、一緒に昼食をとったりしてデートの続きを楽しんだ。


 怪異に邪魔された感じになったけど、ジュースを買いに行ったのにジュースを買い忘れて戻って来るという珍事は起こさずに済みました。それはさすがにドン引きされるからな……。




SIDE 陽山 小夏


 今日も若葉が無事で本当によかった! でもあの男、ホントに何者なんだろう? 蒼月ちゃん、それに若葉まで信用してるみたい。


 確かに私達を助けてくれてはいるし、敵だと決めつけるべきじゃないとは思うけど、向こうが突然、私達に危害を加えてくることだってあるかもしれない。


 だから私はみんなを守るためにも、完全に信用はせずに、いつ何があるか分からないつもりでいよう。私が一番年上なんだから、しっかりしなきゃ。



SIDE 緑川 若葉


 今日は楽しかった! 先輩達の都合がつかなくってどうしようかと思ったけど、一条さんと一緒に行くことになるなんて、思ってもみなかったよ。


 一条さん、初めて会った時は私と同じような人なのかなって思ったけど、二人でお話ししてみると前は緊張してただけなのかな?


 一条さんに声をかけてみたら? って言ってくれた桃華(とうか)さんに感謝……かな? ……あれっ? 私、何を考えてるんだろう……! でもまた誘ってみようかな……?


 あと仮面の人、誰なんだろう? すごく怖かったけど私を助けてくれた……。信用してもいい、のかな……?

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