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第21話 ハーレム

 魔法少女四人と過ごす休日は続く。俺が今日ここまで来た目的はアニメショップに行くことだったんだけど、まだ昼過ぎなので今からでも十分に間に合う。


 テーブルの上には微量の生クリームが残った白いお皿や、空になったパフェグラスがいくつも並び、大人数で楽しんだんだなと実感させてくれている。


「そろそろ出よっか!」


 陽山(ひやま)さんがみんなに声かけすると、それぞれが返事をして立ち上がった。


 そして会計を済ませて外に出ると、よく晴れた六月の日差しの中、思い思いに休日を楽しんでいるであろう人々の姿が目に映る。


「そうだ、私達これからみんなで遊びに行くんだけど、一条くんも一緒にどう?」


 桜野さんがそんな提案をしてくれた。すごいな、ついさっき怪異と戦ったばかりだとは思えない。まるでそんなことは無かったかのようだ。


 桜野さんがよくても、他の三人がどう思うのか分からないからなぁ。ここは断って本来の目的を達成するとしようか。


「お誘いは嬉しいけど、せっかくの女子会なのに俺がいたら落ち着かないんじゃない?」


「それなら大丈夫だよ。さっき一条くんがいない間に、みんなにも聞いてみたからね」


「そういうことよ」


「一条君、よろしくねー!」


「よろしく、お願いします……」


 つまり満場一致でみんなが歓迎してくれている。だがしかし、俺にこのハーレム状態をさらに楽しむ余裕があるのだろうか? ガッチガチに緊張して、まともに話せない可能性すらある。


 これは悩むぞ。魔法少女をとるか平穏をとるか。今度こそ行くんだアニメショップに! 俺が出した結論は……。




「一条くん、これ似合うかな?」


 俺は今、女の子達が試着している服の感想を述べるという、とてもハイレベルなことをしている。


(だめだぁぁー! やっぱり魔法少女には勝てねぇー!)


 だってそこにハーレムがあるから。しかも全員が魔法少女。最高だ!

 別にハーレムだからって、全員が「一条くん好き!」なんてことはないわけで、そこについては本当に何の期待もしていない。


 なんというか俺にとって魔法少女はやっぱり、応援したい存在なんだ。

 それに、ついて来たのにはちゃんと意味がある。


 魔法少女の人となりを知るというか、一人ひとりのことについて、もっと知る必要があると思ったからだ。


 この子はどんな考え方をしていて、どんな行動を取り、何を思っているのか。

 これからも関わっていこうというのだから、やっぱりコミュニケーションをとることは必須だ。きっとアニメでは分からない一面だってあるだろう。


 この試着だってそうだ。俺がついて来たことによって、それぞれの子の服装の好みを知ることができた。


 桜野さんは女の子らしく可愛い半袖シャツにひざ上丈スカートという、露出度が高くて活発な印象のファッション。


 蒼月(そうげつ)さんは露出が控えめで、モノトーンを基調としたパンツスタイルで落ち着いた印象の服装を好む。


 陽山さんはTシャツにショートパンツで、桜野さんよりもさらに露出度が高い。それでいてアクセサリーも身につけており、まさにギャルって感じ。


 緑川さんはひざが隠れるくらいの長さの可愛らしいデザインのワンピースで、あまり露出はしたくなさそうだ。


 試着でもそれぞれが似たような服を選び、俺は全員分の感想を言うことになった。

 もれなく全員に「似合ってる」と伝えたけど、ラブコメみたいに女の子が照れながら「あ、ありがと……」なんて、そんな好感度マックスの反応は起こらなかった。


「やったっ! ありがとー」


「そう、ありがとう」


「ありがとねー!」


「あ、ありがとうございます……」


 それぞれこんな感じ。俺の感想もどうかと思うけど本当に似合っていたんだから、それ以外の言葉が見つからない。まさか「可愛いよ」なんて言えないしなぁ。


 その後も雑貨やらアクセサリーを見て回ったり、ゲーセンでクレーンゲームに白熱したりと、陽山さんと緑川さんとは初対面だというのに、今日一日だけでかなり打ち解けられたと思う。


 夕方になり、俺と桜野さんと蒼月さんはそろそろ電車に乗る時間になった。


「三人とも私と若葉に合わせるために、わざわざ電車に乗って来てもらってごめんねー」


「ありがとう、ございました」


「えぇー、そんな気にしなくていいですよー。私も小夏さんと若葉ちゃんに会いたかったですから」


「私もです。陽山さんと緑川さんといると楽しいですから」


「二人とも嬉しいこと言ってくれるねー! あっ、そうだ。一条君、連絡先交換しよっか! これも何かの縁だからさ」


 こうして俺はギャルと無口少女の連絡先をゲットした。これを活用する機会があるかは、また別のお話だろうけど。



 夜。ベッドに入り今日のことを思い出す。一人で過ごす予定の休日が、思いがけずハーレムとなった。うん、とてもいいものだ。


 俺はその余韻を感じながら、眠りの世界へとおちていく。


「一条 早真(そうま)君。起きてくれるかい」


 ところが俺の快眠はそんな声に阻まれた。ハラグロがやって来たのだ。

 でも俺だってもうハラグロのペースには付き合わない。


(文句の一つでも言ってやるか)

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