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第20話 桜野さんのために

 桜野さん達がカフェの中へ入っていく様子を俺は見届ける。


「さ、説明してもらおっか」


 目の前では陽山(ひやま)さんが行く手を阻む。金髪ギャルだ。正直言ってギャルは苦手なんだけど、今の俺は変身している。だから威厳を出さなければならない。

 だってその方が説得力が増すような気がするから。決してオドオドしてはいけないのだ。


「いいだろう。先ほど怪異への攻撃に協力してくれた礼だ。何か質問はあるか?」


「んじゃ遠慮なく。あんた誰?」


 質問ヘタクソかよ! こんな格好しておきながら正直に答える奴がどこにいる。ああ、でもそういえば蒼月(そうげつ)さんからも最初に同じこと聞かれたっけ……。


「それは答えられない」


「冗談だってー! 私、あんまり難しいこと考えられないからさ、こんな聞き方になっちゃうんだよね。だから気にしないでよ」


「質問はそれだけみたいだな。そこをどいてもらおう」


 早く戻らないと、桜野さん達がいつ結界を解除するか分からない。いや、でもそれはないか。解除するなら全員がそろってからするのが普通だろう。


「それがそうもいかないんだよねぇー」


 そう言った陽山さんはさっきまでとは違い、真剣な面持ちで俺を見る。いや、見るというよりは、観察していると言ったほうが正しいか。


「あんたさぁ、さっきの怪異と同じような格好してるね。もしかして怪異の仲間?」


 さっきの怪異とは、あの死神のような奴のことだ。確かに俺と同じフード付きの黒ローブだったけど、ただそれだけじゃないか。

 そんなことで敵認定されたら、たまったもんじゃない。


 ただ俺の目的を達成させるには、魔法少女全員の理解を得る必要がある。だからちょうどよかった、この機会をチャンスと捉えよう。


「俺はお前達の味方だ。そして俺の目的は、あのピンク髪の少女を救うことだ」


「桜野ちゃんを救う? マジで何言ってんの?」


 まあ想定内だ。むしろそれが普通の反応だろうな。俺は桜野さんと蒼月さんに話したことと同じ説明をした。


「確かにそれが本当なら大変な話だけどさ、んー、何ていうか、イマイチ実感がないっていうか、それホント? って感じかなー」


「俺だって簡単に信じてもらえるとは思っていない」


「ホントでも全く信じられない話だけどさ、さっき桜野ちゃんが怪異を回収しようとして蒼月ちゃんが止めたよね。いつも冷静な蒼月ちゃんがあんな必死になるなんて、きっとあの子の中で、そう判断するだけの何かがあるんだと思う」


 そう話す陽山さんは真剣そのもので、いつも明るいキャラクターのイメージを持っていた俺からすれば、とても意外な表情だった。


「だから私は、あんたを信用してる蒼月ちゃんを信じる。あんたを信用したわけじゃないから、そこは勘違いしないで」


「分かった、今はそれでいい」


 ということは結果的に、蒼月さんを先に説得しておいてよかったということか。

 外堀を埋めるとはこういうことなんだな。きっと埋めすぎてはいないはず……。


「『今は』、ねぇ。私があんたを信じることなんて無いと思うけどねー」


「それでも構わない。俺はピンク髪の少女を救うことができればそれでいい」


「あ、それともう一つ大事なこと。私だって桜野ちゃんにはずっと笑っててほしいと思ってる。だからホントなら今すぐにでもあんたを捕まえたいところだけど、怪異と戦える実力はあるようだし、桜野ちゃんのために手出しはしないってだけだから」


「ああ、心得ている」


「今はあんたを敵でも味方でもないってことにしてるけど、私はともかく少しでも他の子に危害を加えるようなら、私はあんたを敵だと判断するから」


 キツい言い方のようだけど、それは桜野さん達のためを思ってのこと。


 俺や蒼月さん、そして陽山さん。それぞれ考え方は違っても、その思いはみんな同じ。『桜野さんを救いたい』ということ。


 そして話が終わり、俺は急いで元の場所であるトイレ(個室)の中へ。

 しばらくして結界が解除されたため、みんながいるテーブルへ戻った。


「やっほー、一条君。桜野ちゃんと蒼月ちゃんも追加でフルーツパフェ注文するみたいだけど、一条君はどうするー? スイーツ好きだったりするのかなー?」


 そこにはさっきのやり取りとは違って、笑顔で明るく接してくれる陽山さんがいた。


(外堀を埋める必要はあるのか……?)

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