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第2話 アニメの内容を思い出していると……?

 桜野(さくらの)さんと蒼月(そうげつ)さん。二人の魔法少女が怪異を倒した。アニメの第一話の展開と同じだ。


 本来なら二人を応援したいところだけど、アニメの結末を知っている俺からすれば、桜野さんにはもう戦わないでほしい。


 実は、怪異を倒した後に桜野さんが取り出す宝石には、とある役割がある。


 致命傷を負った怪異は全身が光り始めるが、そこまででは倒したことにはならない。

 それを宝石に吸い込ませることにより、はじめて怪異を倒したといえる。


 でもその宝石が厄介で、実は怪異を吸い込めば吸い込むほど、使用者の心が蝕まれてしまう。


 アニメの中では怪異というものは、人の負の感情の暴走から生み出される異形の存在という説明があり、その宝石は怪異が生み出された原因となった、負の感情の受け皿の役割を果たしている。


 もしも受け皿が無ければ、暴走した負の感情が集まって強力な怪異となり、現実世界に具現化して世界を混乱に陥れてしまうという。


 宝石がそれを受け止められる容量は、所有者の心が綺麗なほど大きくなる。

 つまり無垢(むく)で素直な女の子ほど、その宝石を持つに相応(ふさわ)しいというわけだ。


 だから桜野さんは魔法少女に()()()()()()()()


 そして集まった負の感情を宝石で受け止めきれなくなった時、何が起こるかというと……『闇堕ち』だ。


 闇堕ちしかける桜野さん。しかし他の三人の魔法少女が全力でそれを阻止しようとする。

 その結果、桜野さんは負の感情の暴走を全て受け止め続けるため、自らの意思で肉体を残して精神だけを現実と違う世界に隔離した。


 つまり、死んではいないし姿もある。でも意識は無い。そんな終わり方をしたアニメ。

 ネットには『二期まだー?』なんて声がたくさんあり、俺だって二期を待ってる。



 魔法少女の勝利を見届けた俺は急いで食堂に戻り、確保しておいたテーブル席に座った。

 それからほんの数秒遅れで結界が解除され、止まっていた時間が動き出す。大勢の生徒で賑わい活気がある食堂が戻ってきた。


一条(いちじょう)君、お待たせ! 本当にごめんね!」


 桜野さんが申し訳なさそうに席に着く。蒼月さんも「ごめんなさい」と一言。


 俺の対面には可愛い女の子と綺麗な女の子が座っている。

 さあ困ったぞ! 昼休みを女の子と過ごすなんて初めてだ。しかも二人。何か話題を考えていると、桜野さんの明るく可愛い声が聞こえてきた。


「一条くん、コンビニで買ったパンもいいけど、ここの食堂のメニューはどれも美味しいんだよ! 私のオススメはカレーかな!」


 桜野さんはそう言いつつも、彩り豊かな手作り弁当を食べている。


「そうなんだ。それなら明日にでも注文してみるかな。桜野さんは弁当なんだね、自分で作ってるの?」


「実はお母さんに作ってもらってるんだ。もう高校二年生なのに、つい甘えちゃって」


 少し恥ずかしそうに『てへっ』みたいな表情をする桜野さん。本当に明るい子だなぁ。


「俺は高校二年生だってまだまだ子供だから、親に甘えてもいいと思うよ」


「一条くん、なんだか大人な意見だね!」


「そんなことないよ。俺だって誰かに甘えたい時があるし。そういえば蒼月さんも手作り弁当なんだね」


 俺はできるだけ明るい声で聞いてみた。


「ええ、そうよ」


 返ってきた言葉は五文字。


「蒼月さんもお母さんに作ってもらってたり?」


「私は自分で作ってるわ」


「そうなんだ」


 会話終了。俺が返した言葉も五文字だった。


 ま、まあアニメを観てこういう子だって分かってるし? それに悪気はなさそうだし。俺も会話スキルが足りないし。

 そういえばアニメでも桜野さんがずっと喋ってたっけ。




 夜。俺は寝るため部屋の明かりを消しベッドに入り、改めてアニメの内容を思い出す。


 桜野さん達が魔法少女になった理由、それは大切な人のため。

 実は桜野さんと蒼月さんがまだ中学生の時、二人とも肉親を失いかけたことがある。


 桜野さんはお母さん、蒼月さんは妹。二人とも完治が難しく、寝たきりになるかもしれないといわれるほどの大病だった。


 そんな時、少女達のもとに現れたのが謎の生命体。魔法少女ものによくある、かわいらしいマスコット的な生物のことだ。


 でもそのマスコット的なのがなかなか腹黒い。腹の中だけじゃなく見た目も真っ黒で、猫のようでありながらも、ウサギのように長い耳、二本の尻尾、怪しく光る真っ赤な目。


 そんなでも見た目はかわいらしいので、警戒心が薄れてしまうのかもしれない。

 でもそのマスコット的なものこそ、魔法少女が誕生することになった元凶。


 それでまた口調が特徴的で、フレンドリーに聞こえるもんだからタチが悪い。


「やあ、こんばんは。いきなりで悪いけど、君は魔法に興味があるかい?」


 そうそう、丁度そんな感じ。


(……ん?)


 おかしい。部屋には俺しかいないのに声が聞こえるぞ。幻聴かな。確かに今日は不思議なことばかりだったから、疲れてるのかも。


「一条 早真(そうま)君。魔法を使ってみたくはないかい?」


 幻聴に名指しされたので、さすがに気になった俺は声のするほうを見た。

 するとそこには赤い目を光らせている、猫のようなウサギのようなかわいらしい生物が宙に浮いていた。


(こいつだーっ!)


 その生物こそ、さっきまで俺が思い出していたマスコット的なキャラクターだった。

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