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第15話 ボソッと言われると怖い

氷奈(ひな)お待たせ! 遅れてごめんね」


 ピンクの魔法少女姿の桜野さんが、そんな言葉とともに到着した。

 いつも明るい桜野さん。ここは結界の中だというのにその振る舞いは変わらない。


 だからこそ、この子が一人犠牲になる最終話には衝撃を受けた。


 登場する魔法少女は全員が可愛い。俺はてっきり、魔法少女達がゆるーい魔法を使いながら、街のトラブルを解決するような日常系アニメだろうと思って観ていた。


 まあ第一話からして、人の負の感情がどうとか物騒な話だなとは思ったけど。


 俺が思うにこのアニメがウケたのは、可愛い女の子達からは想像できないような、そういったギャップと意外性があったことも大きいと思う。


桃華(とうか)……」


「氷奈、怪異はどこ? ここに来る途中で反応が消えたから、もう倒したの? だったらすぐにこの宝石を使わなくちゃ。……あっ、君はショッピングモールで会った……」


「久しぶりだな」


 俺に気がついた桜野さんは、一歩後ろに下がった。うーん、やっぱり警戒されているなぁ。


「もしかして怪異を倒したのは君なのかな?」


「そうだ。だが勘違いしないでほしい。俺が勝手に倒しただけで、この青髪の少女も真っ先に駆けつけたからな」


 俺は蒼月(そうげつ)さんが悪く思われないように、そう付け足した。

 蒼月さんだって魔法少女としての役割を果たそうと頑張っているんだ。たとえ俺がイマイチ信用されてないとしても、それは伝えたい。


「うん、信じるよ。氷奈ならきっとそうすると私も思っているから」


 本当にこの二人はいい関係性だな。


「また君のお世話になっちゃったね。今回も怪異を倒してくれてありがとう!」


「言っただろう? 戦いになれば必ず駆けつけると」


「そっか、そうだったね!」


 うーん、桜野さんのこの反応どうなんだ? 普段から誰に対しても同じように接しているから、逆に本心が見えづらいというか、あのハラグロと違って決して腹黒ではないけど、判断が難しいな。


 蒼月さんは目を逸らしたんだっけ。蒼月さんの場合、普段はあまり感情を表に出さないから、ちょっとした仕草でなんとなく分かったりする。


「氷奈、ケガはない?」


「ええ、大丈夫よ……」


 蒼月さんはそう答えつつも、少し(うつむ)いている。こういう時の蒼月さんは、何かを言おうとしているか、何かに迷っていることが多いみたいだな。


「ねえ桃華」


「氷奈、どうしたの?」


「このお方……いえ、この人の言っていること、本当かもしれないわ」


 おお、蒼月さんが自ら話を切り出してくれたぞ。それにしても、なんださっきの言い間違いは……!?


「本当かもしれないって、ショッピングモールで言ってたこと? 戦ってはいけないとか、私だけが犠牲になるとかいう話」


「そうよ。私だって半信半疑だったけど、こうやって実際に彼の力を目の当たりにすると、信じてみてもいいと思えないかしら?」


「うーん、確かにすごい力だなって思うけど、私達だけで決めちゃっていいのかな?」


「それもそうね。これは私と桃華の二人だけじゃなくて、魔法少女としての決断になるかもしれないわね」


「じゃあ私から連絡しておくね」


「お願いするわね」


 桜野さんは誰に連絡しておくと言っているのか。俺が介入したとはいえ、今日のこの場面はアニメ第三話の場面で間違いない。


 だとすると次は第四話になるわけだ。そして第四話の内容というと、二人以外の魔法少女が初登場する。


 同じ学校に通っているのはこの二人だけということもあり、あとの二人とはそこまで頻繁に会うわけじゃない。


 でも決して仲が悪いわけじゃないので、魔法少女とか関係なく一緒に出かけることはあるようだ。


「どうするか決まったのか?」


「うん、やっぱり今すぐには決められないから、もう少し時間をもらえないかな?」


「分かった。いい返事を期待している」


「うん、それなら今日はこれでお別れだね」


 桜野さんはそう言って歩き出した。それを見た蒼月さんも後に続く。そして俺の横を通り過ぎる時にボソッと一言。


「あなたが私を必要としてくれたこと、すごく嬉しかった。責任とってね」

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