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第12話 観ていてよかった

 ハラグロから桜野さんの監視を頼まれた。魔法少女アニメは多くの場合、マスコットキャラは常に主人公のそばにいるものだと思うけど、ハラグロはそんなことしない。


 アニメではせいぜい気まぐれに魔法少女の前に現れて、「やあ、調子はどうだい?」なんて声をかけるだけだ。


 それにハラグロに言われるまでもなく、俺は桜野さんと蒼月(そうげつ)さんのことを気にかけている。それを監視だなんてとんでもない。俺にとって魔法少女は応援したくなる存在なんだ。


 ショッピングモールでの一件から一週間。再び休日がやってきた。


 さすがに二週連続で女の子から誘われるなんて奇跡は起こらなかった。でも俺の過ごし方は決まっていた。


 時刻は正午すぎ。俺は今、一人で駅前の大通りに来ている。いつも混雑している駅で、多くの人が行き交い活気に(あふ)れる場所だ。


 そしてそこに大きな映画館があり、俺の目的地はそこだ。でも目的は映画鑑賞じゃない。


 俺は考えてみたんだ。アニメの世界ということは、俺はどこで何が起きるか知っていることになる。だって観ていたんだから。


 でも大抵の場合は、そのエピソードが何月何日の何曜日の何時にあった出来事なのかといった、細かい部分までは描かれていない。


 だから今までは急に怪異が現れて、後から「これは第一話に登場する怪異だな」とか、後手に回ることになっていた。


 だけど今日は違う。今日ここで怪異が出現するという根拠があるんだ。


 アニメの第三話での一場面に、『月末に公開の映画があって、それを五月の最終週の休日に観に行く』というものがある。そしてそこに怪異が現れるというわけだ。

 しかも映画だから時間指定のおまけ付き。


 つまり今日ここで待っていれば、変身した桜野さんと蒼月さんに会える。

 しかも先にスタンバイしてるのは俺だから、怪異から二人を守ることができるというわけだ。


 まあもし俺が転生したせいで微妙に内容が変わっていたら、普通に一人で映画を観て帰ればいいだけだからな。


 というわけで俺は、映画館にいるのに中に入らず、待ち合わせでもないのにずっと外にいるという、怪しすぎる行動をしている。


 強いて言うなら、『怪異と待ち合わせをしている』または、『桜野さん達と待ち合わせをしている(一方的に)』ということになるか。

 うわぁ……、まるでやべぇ奴みたいじゃないか。


 映画の上映時間になり、俺は心構えをする。アニメでは実に間が悪いことに、上映中に怪異が現れるんだ。


(さあ、どうなる……!?)


 待つこと数分、背筋がゾクっとする感覚がした。どうやらアニメの通りになるということらしい。


 そして結界が張られ、辺り一面がモノクロになった。


 現れた怪異は大岩が集まってできており、その大きさは10メートルほどだろうか。まるでゴーレムのような見た目をしている。

 そいつを蒼月さんのオーラパンチで派手に崩すのが観ていて爽快なシーンだ。


 俺は怪異の様子に気を配りつつ、魔法少女の到着を待つ。


 俺がさっさと倒して回収すればいい話かもしれないけど、俺の最終的な目的は桜野さんが闇堕ちしないようにすること。

 そして女の子達を魔法少女の役目から解き放つこと。


 だから俺が一人で倒し続けても、根本的な解決にはならない。


 そうしないと彼女達はこれからも、いつ怪異との戦いになるか分からない人生を送ることになってしまう。


 そんな生活が10年も続けば、呼び方も『魔法少女』から『魔法少女。え……? 少女?』なんて、呼ぶ方も困ることになってしまいそうだ。


『魔法お姉さん』・『魔法女性』。全然しっくりこないな。やはり『魔法少女』こそが至高!

 

 彼女達はもう十分にその役目を果たしたと思う。だから多少遠回りで効率が悪いとしても、こうするのがベストだと思っている。


 ほどなくして映画館から飛び出して来る人影が見えた。それは蒼月さんだ。そして桜野さんは……いない。


 そう、第三話では映画鑑賞をしていた蒼月さんが、一人で怪異と戦う。

 ということは、俺と蒼月さんの二人きりになるということだ。

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