1-8 元悪役令嬢は提案を受け入れる
「その後、兄と連絡を取ることはなかった」
「どうしてですか?」
喧嘩別れでないのなら、連絡ぐらいとっても問題はない。
何故連絡を取らなかったのだろう。
「家を出た手前、連絡も取りづらかったんだろう。平民として生活をしていたしな」
「ああ、なるほど」
平民と貴族がおいそれと連絡を取ることはできない。
いや、別に取ろうと思えば取れるのかもしれないが、次期公爵である叔父が平民になったという醜聞が周囲に知られる危険性がある。
それを避けるため、叔父は連絡を取らなかったのだろう。
「だが、兄の妻から先日連絡がきた」
急に話の流れが変わる。
先ほどまで連絡できないと言っていたのに、今度は連絡が来ていた。
「・・・・・・駆け落ちをしたメイドからですか?」
「ああ、そうだ。兄は死ぬときに公爵家を頼るように言っていたらしい」
「家を出たのにですか?」
私は少し不満だった。
自分のしたいことを叶えるためにわざわざ家を出たのだ。
それなのに、その家を頼るのはどうにもしっくりこない。
「子供のお前にはまだ難しいだろうな。残された家族には幸せに過ごしてもらいたい。だからこそ、利用できるものは最大限利用すべきだ」
「それが公爵家、だと?」
「ああ、そうだ。すでに妻が他界している私の事情も知っていたようで、後妻として受け入れるように手紙に書かれていたよ。あくまで名目上、だがな」
「なるほど」
前世では知らなかった情報がまた出てきた。
前世で父と後妻は愛し合っていると思っていた。
しかし、現実は違っていたらしい。
まさかこんな裏事情があるとは──
「あとは兄の娘をそのままにしておくわけにはいかなかった」
「どうしてですか?」
「家を出たとはいえ公爵家の血を継いでいる。それを利用する輩が現れる可能性もあるからな」
「ああ、そういうことですか」
他の説明を聞いていたおかげか、すぐに理解ができた。
たしかに悪いことを考える人間は多く、平民に公爵家の血を継ぐ者がいれば利用しようとするだろう。
それを避けるため、お父様は二人を受け入れるわけだ。
「急に家族が増えるが、受け入れてくれないか」
「わかりました」
私に受け入れない選択肢はなかった。
前世では拒否したせいで破滅の道に進んだのだから──
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