番外編5-1 かわいい妹は義姉と仲良くなりたい
私は平民として産まれた。
決して裕福ではなかったが、幸せに生活できていたと思う。
優しいお父さんとお母さんがいて、家族仲良く暮らしていた。
その幸せがいつまでも続くと思っていた。
だが、流行病がすべてを壊してしまった。
収束するまでの間に多くの者が流行病で命を落とした。
お父さんもその一人だった。
家計の収入源がなくなった私たちはここから貧乏生活になると思っていた。
しかし、なぜか私たちはオラシオン公爵家で暮らすことになった。
お父さんが元々公爵家の人間だったらしく、お母さんもそこで働くメイドだったようだ。
二人は結婚するために家を飛び出したそうだ。
とても戻れるような立場ではないが、対立していたのは先代公爵──私の祖父に当たる人だったらしい。
今の公爵はお父さんの弟──私の叔父にあたる人だった。
クールな雰囲気だが、時折見せる微笑みがお父さんと同じ雰囲気を感じた。
彼には一人娘がいた。
私と同じ年齢であり、従姉妹にあたる令嬢だった。
彼女も流行病で母親を失ったらしく、同じ立場の私たちは仲良くなれると思っていた。
だが、結果として私は彼女から嫌われてしまった。
嫌われたまま公爵家で生活していた。
ずっと虐められ続けたが、実は大したことはなかった。
所詮は貴族令嬢の考える程度のいじめであり、平民として生活していた私としてはそこまで苦にならなかった。
ドレスにワインをかけられたときも、侮辱された恥ずかしさよりドレスが汚れたことの方が気になった。
貴族のマナーができていないことを指摘されたときも、元々平民として生活していたので当たり前ではないかと思っていた。
私の大事な物を壊したり、暴力を受けたりしたら多少はきつかったかもしれない。
だが、そもそも私が持っているものは公爵家で買ってもらったものだし、お姉様は暴力を使うこともなかった。
だからこそ、普通に生活することができた。
だが、それを良しとしなかった者もいた。
お姉様の婚約者だったアレク様だった。
私が虐められていることを知り、手助けしようと話しかけてきた。
あとで知ったのだが、お姉様が擦り寄ってくるのがうっとうしくて、アレク様はうんざりしていたそうだ。
だからこそ、アレク様にまったく興味を持っていない私に声をかけたらしい。
だが、その行動が悪かった。
何度か話しているうちにアレク様が恋に落ちた。
お母さんも平民ではあったが美人であり、その血を受け継ぐ私も美人だった。
お姉様に比べれば劣るかもしれないが、嫌悪感がある相手より好意的な相手の方が好かれやすい。
結果として、私はアレク様に好かれてしまった。
私としては不本意な結果だったが、それがお姉様の嫌がらせに拍車をかけてしまった。
今までは子供の嫌がらせ程度だったが、流石に看過できないほどの内容になってきた。
公爵令嬢という立場ですら隠しきれないほどの嫌がらせで周囲に悪評が流れていた。
取り返しのつかない嫌がらせを行い、結果としてお姉様は婚約破棄されてしまった。
私はどうにか弁護しようとした。
だが、いくら私がお姉様を弁護しても、私の評判が上がるだけだった。
まるで聖女であるかのように扱われた。
周囲から持ち上げられ、私は反吐が出るような思いをした。
お姉様の評判を地に落とした私にそんなことを言われる資格はない。
お姉様が牢の中で亡くなり、公爵も跡を追うように屋敷で亡くなった。
私は後悔で気が狂いそうになった。
私が公爵家に来たせいで二人は亡くなってしまった。
しかし、流行病で父親を亡くした私にこの選択を拒否することはできなかった。
つまり、受け入れられてからの行動がこの結果を引き起こしたのだ。
今となっては後の祭りだが──
ある日、後悔で精神的に疲れ、死んだように眠りに落ちた。
目が覚めると、運命が変わったあの日に戻っていた。
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