番外編4-2 ライバル令嬢はいろいろと手に入れる
10年後、いろいろあったが結果としてロータス嬢が婚約者に選ばれた。
私やリリー嬢も婚約者候補として残っていたが、アレク様の気持ちは完全に彼女に向いていた。
そうなってしまえば、いくら彼女でも逃げることはできなかったようだ。
しかし、気になる点があった。
「どうしてアレク様は貴女を選ばなかったのかしら?」
私は目の前の令嬢──リリー嬢に問いかける。
相変わらず羨ましいほど美しい。
だが、以前ほど彼女に嫉妬することはなかった。
「お姉様の行動のせいね」
「ロータス嬢の?」
よくわからない答えが返ってきた。
彼女は何を言っているのだろうか?
「かつてのお姉様はアレク様の婚約者になることに固執していたわ。つまり、アレク様に好かれようとしていた」
「それの何が悪いの?」
「別に悪いことではないけど、お姉様はそれが過剰だったの。その気持ちにアレク様は辟易していたの」
「・・・・・・なるほどね」
言っていることは理解できた。
私は知らなかったが、ロータス嬢はアレク様のことをよっぽど愛していたのだろう。
だからこそ、前世では過剰に他者を排除しようとした。
その結果、自らが裁かれることになった。
だが、今回の彼女はアレク様から逃げようとした。
それが逆にアレク様からの興味を引いたのだろう。
皮肉な話である。
「それよりも私は貴女の変わりようが驚きね」
「どういうことよ」
「かつての貴女だったら、どうやってもアレク様の気を引こうとしていたわよね」
「前も最後は諦めていたわ。ロータス嬢には勝てないとわかったからね」
自分より優秀な相手がいれば、諦めるのは得策である。
前世の記憶を思い出し、勝ち目のない戦いだとわかったのだ。
すぐに諦める選択を取った。
「その結果、素晴らしい婚約者を得たものね」
「うらやましいでしょう?」
私は不適に笑みを浮かべる。
たしかに私は幸せ者である。
とても素晴らしい婚約者を得たのだから──
「まさかクレイと婚約するとは思わなかったわ。そこそこ年齢が離れているし」
「彼はそんなことを気にしていないわ。年上の私のことをお姫様扱いしてくれるもの」
「それ、嬉しいの?」
「恥ずかしさもあるけど、愛されていることはわかるわ」
「それ、外で話さないでね。お互いの家の恥になるから」
「恥、ってなによ。まあ、そういうのは二人だけの時にするように言ってるわ」
流石に恥ずかしい内容であるのはわかっている。
けど、愛されていることに喜びがあるのだ。
今までの私は公爵家のために、ふさわしくなるように努力をしてきたのだ。
その結果、私を評価する際、公爵令嬢として評価されることが多かった。
だが、クレイは私自身を見てくれた。
彼が幼い頃に出会ったおかげか、いろんなしがらみなど関係なく私と交流してくれた。
そのおかげで私も素直に彼と話すことができ、仲を深めることができた。
私はオラシオン公爵家に嫁ぐことになった。
「そういえば、お姉様と呼んだ方が良い?」
「それは止めて。同い年だし」
冗談めいて提案してみると拒否された。
まあ、私も呼びたかったわけじゃない。
「で、貴女はこれからどうするの?」
気になることを質問する。
前世の彼女はロータス嬢の後釜として王太子妃となった。
だが、今回はロータス嬢が王太子妃のままだった。
しかも、オラシオン公爵家は次期当主がクレイとなっているので、リリー嬢は自由に過ごせるわけだ。
だがら、今後はどうするのか気になったのだ。
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