番外編4-1 ライバル令嬢は宿敵を心配する
私──レイラ=キュリテは幼い頃から公爵家の人間としてふさわしくなるように教育されてきた。
厳しい教育に耐え、同年齢の令嬢よりよっぽど優秀な令嬢だと自負している。
だが、所詮はただの凡人だった。
本物の天才には勝てなかった。
ロータス=オラシオン嬢──私と同じ公爵令嬢であり、オラシオン公爵家の長女である。
私が苦労している内容をあっさりと身につけ、周囲には多くの味方がいた。
公爵令嬢としての教養を身につけるのに集中するあまり、私は周囲との交流を疎かにすることがあった。
だが、余裕のあるロータス嬢は他者との交流すらこなしていた。
しかも、彼女はほとんどすべての令嬢の夢である王太子──アレク様の婚約者の座に納まっていた。
私が公爵令嬢として努力を続けていたのも、アレク様の婚約者になることが目標だった。
王妃になりたい気持ちもあったが、アレク様自身のことも出会った頃から好きだった。
だが、そんな私の気持ちも届くことなく、ロータス嬢にその座を奪われてしまった。
だからこそ、私はロータス嬢が嫌いだった。
しかし、彼女の栄華は長く続かなかった。
オラシオン公爵家は流行病で公爵夫人を亡くし、新たに後妻を迎え入れた。
平民出身であり、彼女には連れ子がいた。
ロータス嬢や私と同い年であり、とても可愛らしい少女だった。
だが、それが良くなかった。
ロータス嬢は二人を敵視し、さまざまな嫌がらせをしたらしい。
ただでさえ実母を亡くし、残った父親や自分の立場を奪われると思ったのかもしれない。
それは彼女自身しかわからないことである。
結果として、ロータス嬢はその罪を裁かれることになった。
王太子の婚約者としてあるまじき行動をしたとして、婚約は破棄された。
皮肉なことに、嫌がらせをした逆境で王太子と義妹が結ばれることになった。
二人はそのまま幸せな家庭を築いたそうだ。
その裏でロータス嬢は冷たく暗い牢屋の中で一人寂しく息を引き取ったらしい。
あとで聞いたが、オラシオン公爵も一人寂しく屋敷で亡くなっているのを発見された。
この話を聞いたあと、私はとてもショックを受けた。
たかが平民出身の女性に王太子を奪われたことにではない。
嫌いだと思っていたロータス嬢のことを私は認めていた。
私に出来ないことを平然とこなす彼女のことを嫌いではあったが、その能力の高さを認めていた。
むしろ尊敬していたと言っても良い。
優秀な彼女のことを私は嫉妬していた。
彼女は可愛らしい義妹のことを嫉妬していたのだろう。
もしかしたら、彼女と私は共感することができたのかもしれない。
彼女が亡くなった今となっては意味の無いことだが──
ある日、目を覚ますと昔に戻っていた。
何が起こったのか分からなかった。
いろいろと状況を把握すると、8歳の頃に戻っていた。
すでに婚約者選びのパーティーが終了した後であり、その記憶を思い起こして違和感があった。
ロータス嬢の行動が以前のものと違っていた。
前世では私と敵対関係になっており、アレク様の取り合いをしていた。
だが、なぜか今回は私のことを褒めるような行動をしていた。
さらに、義妹のリリー嬢がパーティーに参加しており、彼女を推すような言動をしていた。
明らかにおかしい。
もしかすると、彼女は私と同じように記憶があるのかもしれない。
だが、違う可能性もあるので、聞くことはできなかった。
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