1-6 元悪役令嬢は公爵家の過去を聞く
「兄には婚約者がいた。しかし、それはあくまでも政略的なものだった」
「・・・・・・」
父の説明に私は何も言えなかった。
貴族同士の結婚において、恋愛よりも政略的なものの方が多い。
家同士の繋がりを作る方が重要だからである。
「結婚を控えたある日、兄は私の元を訪れた。「好きな人がいる」と言われた」
「え?」
予想外の展開に私は驚く。
いや、現状からそのような展開は推測できるが、貴族令嬢としての既定路線を歩いていた私にとっては予想外だったのだ。
そんな私を放って、父は話を続ける。
「相手は兄の世話をするメイドだった。どういう理由で好きになったかわからないが、身近にいたからおかしくはないだろう」
「ですが、身分の差が・・・・・・」
物語で身分違いの恋が人気だと聞いたことがある。
しかし、それはあくまで物語だけの話だろう。
実際に起こるようなものではないと思っていたが──
「だからこそ、兄は私に伝えたのだろう。次期公爵としての立場を捨て、愛する者を選ぶ、と」
「その決意は素晴らしいと思いますが、話は公爵家だけの話ではないですよね? 婚約者だった相手方にも迷惑がかかると思いますけど・・・・・・」
身分違いの恋が実るのは物語としてハッピーエンドだろう。
しかし、現実ではそうはいかない。
周囲に迷惑をかけてしまうのだ。
心配をする私に父は種明かしをする。
「結果として、誰にも迷惑はかからなかった」
「どうして?」
「まず、兄の婚約者だった女性は私の妻になった。つまり、お前の母親だ」
「え?」
予想外の展開に驚いてしまう。
まさか登場人物の一人が私の母だとは思わなかった。
「彼女は政略結婚を受け入れており、オラシオン公爵家と繋がりを作れれば良いと思っていたんだ」
「それって・・・・・・」
「結婚するのであれば、私でも兄でもどちらでも良かったわけだ」
「・・・・・・」
愛のない話に私はなんとも言えなかった。
政略結婚とはそういうものなのかもしれないが──
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