番外編2-2 元メイドの公爵夫人は義娘の幸せを願う 2
正直、すぐには受け入れられないと思った。
母親を失ったばかりの少女は悲しみに暮れているはずだ。
そこにいきなり義母として現れるのだ。
嫌われることすら覚悟していた。
だが、予想と違って、私とリリーは受け入れられた。
お嬢様──ロータスちゃんが思ったより私たちに好意的だったのだ。
最初は何か考えがあるのかと思ったが、素直に懐いてくれる様子に私は絆されてしまった。
公爵様──レザン様も好意的だった。
私のことを公爵夫人として扱ってくれたのだ。
平民出身の元メイドには身に余る光栄ではある。
分不相応な対応に断ろうとしたのだが、これは私を守るための措置だったらしい。
後妻として公爵夫人になった私は良くも悪くも有名になってしまった。
もちろん、悪い意味の方が大きい。
平民出身の私には後ろ盾がない。
私を引きずり下ろして、公爵夫人の座を奪おうとする者が現れる可能性があった。
だからこそ、私を溺愛している振りをすることで、そういった連中が潜り込むのを防いだわけだ。
といっても、レザン様はガーベラ様のことを愛していた。
既に亡くなっているが、その愛が朽ちることはない。
その間に私の入る余地はないので、勘違いすることもなかった──はずだった。
「どうしてこうなったんだろう?」
公爵家の庭園で私は呟いていた。
目の前には紅茶とお菓子が用意されており、さながら貴族のティーパーティーの様相である。
いや、実際にそうなのだろう。
「お菓子が気に入らなかったか?」
「いえ、そういうわけじゃないです」
レザン様が優しく気を利かせてくれる。
クールな雰囲気だが、優しい行動を取ってくれる。
そのギャップに私は心惹かれてしまった。
「じゃあ、何か気になることがあるのか?」
「いえ、元メイドの私がこんな風に公爵夫人らしい生活を送るとは思っていなかったので」
「言っただろう? 君を公爵夫人としてしっかりと扱う、と」
「たしかにそうですが、ここまで凄いとは思っていなかったです」
生活が不自由どころか、過剰だと思うほどいろいろ揃えていただいた。
ドレスやアクセサリーなど、一つだけでも私が数年働いてようやく買えるような値段のものをいただいた。
最初は数日毎に渡されていたが、それは拒否していた。
あまりに多すぎるので、使う分だけにしてもらった。
「これもロータスちゃんのおかげね」
「そうか?」
「ええ、そうよ。あの娘が私たちを受け入れてくれたからこそ、こうやってレザン様と仲良くなれたんですから」
「それもそうだな」
ロータスちゃんが私たちを受け入れてくれたことで、公爵家は明るくなった。
彼女にも何らかの思惑があったようだが、仲良くしようとするのは良いことである。
その結果、家族仲は良くなったのだ。
そのおかげか、私とレザン様の仲が深まった。
お互いに配偶者を失った境遇だったためか、共感することも多かった。
同じ境遇の仲間と思ったからか、徐々に距離が詰まっていった。
その結果、クレイが産まれた。
まさかこんなことになるとは公爵家に来た当初は思ってもいなかった。
「でも、結局ロータスちゃんの望みだけは叶わなかったのよね」
「まあ、それは仕方がない」
ロータスちゃんは王太子の婚約者にならないために行動していた。
いろんな問題を起こし、自分がいかにふさわしくないかを周囲に示そうとしていた。
だが、根が良い娘だったせいか作戦の詰めが甘く、結局評価を上げることに繋がっていた。
誰もが彼女を褒めていたのだ。
「でも、しっかり愛されているから、ロータスちゃんも幸せな家庭を作れるはずよね」
「そうだといいな」
私の言葉にレザン様も共感してくれる。
私のことを受け入れてくれて幸せにしてくれたのだ。
ロータスちゃんにも幸せに鳴って欲しい。
レザン様も同じように思ってくれているはずだ。
娘の幸せを願いながら、私たちはのんびりと過ごしていた。
これからもこの幸せがキッと続いていくだろう。
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