1-5 元悪役令嬢は知らない裏事情を聞く
「どういうことですか、お父様?」
驚きのあまり、思わず父を問い詰めてしまう。
何をどうしたら兄の嫁を後妻として迎えることになるのだろうか?
まさか不倫?──そんな考えが頭をよぎる。
私の考えていることがわかったのか、父は慌てて弁明する。
「私は妻一筋だ。愛しているのはガーベラ──お前の母親だけだ」
「ですが、後妻として迎えるのですよね?」
思わず反論してしまう。
妻一筋だというのなら、後妻を迎えるのは矛盾しているのでは?
そんな私の質問を聞き、お父様は気持ちを落ち着けるように大きく息を吐いた。
「あくまで仮初めの立場としてだ」
「仮初め、ですか?」
父の説明に私は首を傾げる。
前世では知らなかった情報だ。
「彼女の旦那──私の兄が亡くなったらしい」
「え?」
予想外の情報に驚いてしまう。
まさか知らないところで親族が亡くなっているとは思わなかった。
それと気になることが一つ。
「お父様にご兄弟がいたんですか?」
前世でも父様の親族にほとんど会ったことはなかった。
父方の祖父母は王都から遠くの領地に隠居していたし、兄弟がいるという話も聞いたことがなかった。
「ああ、一つ上の兄がいたよ。私より優秀で、太陽のように明るくて、いつも周囲に人がいたな」
「・・・・・・」
父は懐かしむような表情になった。
別に嫌っていたり、仲違いをしているわけではないようだ。
それなのに、前世の私はどうして叔父のことを知らなかったのだろうか?
「優秀な兄は次期公爵として期待されていた。当然、私もそう思っていたし、反対もしていなかった」
「ですが、今はお父様が公爵ですよね? 先ほどの話では、亡くなったのは最近でなくとも、お父様が公爵になった後では?」
純粋に疑問が浮かんでくる。
お父様の説明が正しければ、優秀な兄が公爵を継いでいるはずだ。
それなのに、お父様が公爵になっていて──
別にお父様が優秀ではない、と言っているわけではない。
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