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【番外編終了】前世で冤罪をかけられた令嬢は期待しない  作者: 福音希望
第三章 元悪役令嬢は幸せのために策謀を巡らす
55/73

3-9 元悪役令嬢はとある場所に向かう


 放課後になり、私は学校を出た。

 できる限りアレク様と関わりたくないのも理由の一つだが、実は本当に用件もあった。

 馬車で街の方まで連れて行ってもらう。

 目的地の手前で降ろしてもらう。


「ようこそ、ロータス様」


 建物の中に入ると、初老の男性が出迎えてくれる。

 そのまま用件を聞かずに案内を始める。

 そして、建物の一番奥に辿り着くと男性が扉をノックする。


「入ってください」


 扉の向こうから返事が聞こえ、男性が扉を開く。

 促された私は部屋に入る。

 そして、そのままソファに座った。


「お久しぶりです、ロータス様。今日の仕事はなかったと思いますが?」


 向かいに座っていた男性が問いかけてくる。

 彼はこの商会の主──デイジーの父親である。

 男爵でありながら、商会を運営している凄腕──と言えば聞こえは良いが、実際は代々受け継がれている商会を運営しているだけである。

 潰すことはないが、これといって成長することもない、いわば普通の経営者である。


「今日は仕事じゃないわ」

「そうなのですか?」

「そろそろ契約してもらおうと思ってね」

「本気ですか?」


 男爵は真剣な表情になる。

 契約とは私をこの商会に雇うことである。

 しかし、彼はこの契約を中々結ぼうとはしなかった。


「私の能力を見せたでしょう? この商会で十分に働けると思うわ」


 自信満々に私は宣言する。

 前世と今世で王妃教育を受けた私にとって、商会での業務など朝飯前である。

 経営についても、追加の知識を加えることで意見することも難しくはなかった。

 そのおかげか、商会もかなり大きくなった。

 つまり、男爵は私に恩があるわけである。







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