3-9 元悪役令嬢はとある場所に向かう
放課後になり、私は学校を出た。
できる限りアレク様と関わりたくないのも理由の一つだが、実は本当に用件もあった。
馬車で街の方まで連れて行ってもらう。
目的地の手前で降ろしてもらう。
「ようこそ、ロータス様」
建物の中に入ると、初老の男性が出迎えてくれる。
そのまま用件を聞かずに案内を始める。
そして、建物の一番奥に辿り着くと男性が扉をノックする。
「入ってください」
扉の向こうから返事が聞こえ、男性が扉を開く。
促された私は部屋に入る。
そして、そのままソファに座った。
「お久しぶりです、ロータス様。今日の仕事はなかったと思いますが?」
向かいに座っていた男性が問いかけてくる。
彼はこの商会の主──デイジーの父親である。
男爵でありながら、商会を運営している凄腕──と言えば聞こえは良いが、実際は代々受け継がれている商会を運営しているだけである。
潰すことはないが、これといって成長することもない、いわば普通の経営者である。
「今日は仕事じゃないわ」
「そうなのですか?」
「そろそろ契約してもらおうと思ってね」
「本気ですか?」
男爵は真剣な表情になる。
契約とは私をこの商会に雇うことである。
しかし、彼はこの契約を中々結ぼうとはしなかった。
「私の能力を見せたでしょう? この商会で十分に働けると思うわ」
自信満々に私は宣言する。
前世と今世で王妃教育を受けた私にとって、商会での業務など朝飯前である。
経営についても、追加の知識を加えることで意見することも難しくはなかった。
そのおかげか、商会もかなり大きくなった。
つまり、男爵は私に恩があるわけである。
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