3-8 元悪役令嬢は結婚生活を暗闇だと考える
「まあ、レイラ嬢が信じてくれるだけで十分よ」
「ほ、褒めても何も出ませんわ」
私の言葉にレイラ嬢がそっぽを向く。
耳まで真っ赤になっている姿を見て、ほっこりしてしまう。
相変わらず可愛らしい。
「アレク様の婚約者になってくれるだけで十分よ」
「信じてくれるだけで十分だったんじゃないの? そもそも、私もリリーも難しいと思うわ」
呆れた表情でレイラ嬢が返答する。
やはり無理だったか。
彼女も最初はアレク様の婚約者になるべく王妃教育を受けていた。
そして、王妃になるのに十分な教養を身につけた。
だが、それと同時に諦めの気持ちを抱いたようだ。
同時期に王妃教育を受けていた私と比較し、自分の方が劣っていると思うようになったのだ。
私としては前世の経験がある上で手を抜くことを禁じられていただけなのだ。
決して彼女が劣っているわけではない。
だからこそ、いろいろ手助けをしてきたつもりなのだが、それも逆効果だった。
余計に彼女は劣等感を抱くようになった。
その結果、彼女は一歩引いたわけだ。
リリーも同様である。
私にとって、死活問題だ。
「そんなことないわ。王妃教育を最後まで受けたんだったら、十分に王妃としてやっていけるわ」
「すべてにおいて上回っている貴女よりうまくできるわけないわ」
「やる気がない私より絶対にうまくいくわ」
「やる気で巻き返せない程の差があるのよ」
どれだけ煽てても、彼女は頷かなかった。
候補になってから10年近く続けているが、無理だったようだ。
だからこそ、私は次の作戦を決行することにしたわけだが──
「とりあえず、いい加減に諦めた方が良いわよ」
「諦めたら、私の人生が暗闇になっちゃうじゃない」
「結婚生活を暗闇と表現するのはやめなさい。王族との結婚ですら暗闇なら、それ以下の貴族や平民の結婚生活はどれほど酷くなるのよ」
レイラ嬢がツッコミをしてくる。
彼女の言っていることも間違っているとは言わないが、王族と結婚するからこそしんどいこともあると思う。
まあ、私はまだどちらの結婚生活も経験していないけど──
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