3-7 元悪役令嬢はライバルに心配される
「それで何の用かしら?」
食堂の端のテーブルで私とレイラ嬢は向かい合わせに座った。
公爵令嬢が二人もいるせいか、隣のテーブルには誰もいない。
しかし、少し離れたところから他の生徒達が興味津々の様子でこちらを伺っていた。
「私が聞きたいことはわかっているでしょ?」
「食堂のおすすめランキングかしら?」
問いかけに私は真剣な表情で答える。
王妃教育を終えた彼女に私が教えられることはこれぐらいだろう。
そんな私の答えを聞いた彼女は顔を真っ赤にして怒る。
「最近、噂になっているわ。貴女が男爵令嬢を虐めている、という話よ」
「ああ、そのこと」
ようやく私は事態を理解する。
私のことを心配してくれたのだろう。
偉そうな雰囲気ではあるが、他人を心配してくれる優しさを持っている。
そういう彼女こそ王妃にふさわしいのではないだろうか?
「そのこと、じゃないでしょう。貴女は腐ってもオラシオン公爵家の令嬢であり、アレク様の婚約者候補なんですよ。そんな噂が流れること自体、良くないことなのよ」
「そういう立場だからこそ、そんな噂を流されるんでしょ? 誰かが私を蹴落とそうとしているんじゃないかしら?」
彼女の指摘ももっともであるが、別におかしな話ではない。
すべての人間に好かれることができないので、嫌っている人がそんな噂を流すことだって十分にありえる。
「まあ、たしかにそうでしょうね。ですが、それよりもおかしいことがあるわ」
「おかしいこと?」
「貴女がその噂を否定していないことよ」
「なるほど」
心配する理由が理解できた。
噂を否定しないことで、虐めをしたと認めたと思ったのだろう。
私のことを知っているからこそ、信じたくないと思っているのだろう。
「なるほど、じゃないわ。否定をしないと、あることないこと言われているのよ」
「否定したところで、信じてくれる人は少ないでしょ。言い訳をしている、って思われるだけよ」
「それは・・・・・・」
私の言い分にレイラ嬢は言葉を詰まらせる。
これは前世で学んだことである。
たとえやっていないことでも、周囲が信じてしまったら事実となってしまう。
本人がどれだけ否定しようとも、ひっくり返すことはできないのだ。
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