2-10 元悪役令嬢の計画は失敗する
「礼儀もしっかりしておるようだな」
「いえ、私などまだまだです」
陛下の褒め言葉に私は謙遜する。
高い評価はされたくないので、素直には受け取らない。
前世と同じような未来にならないためにも──
「謙遜しなくとも良い。アレクに比べれば、格段に良い」
「お父様」
アレク様が陛下を睨む。
馬鹿にされるのは嫌なようだ。
こういう性格は変わっていない様子である。
「私よりも義妹のリリーの方が優秀です。姉として恥ずかしい限りです」
「お姉様っ⁉」
リリーが驚いて、こちらを向く。
だが、私の目的のために無視をする。
「ほう、そうなのか?」
「はい。不出来な姉の私を注意できる優秀な妹です。公爵家内の評価ではありますが、かなり高いです」
陛下が興味をもってくれた。
さらに私はリリーを褒める。
身内贔屓というデメリットを言いつつ、嘘は言っていないと思ってもらう。
「陛下、良いですか?」
「リリー嬢、どうした?」
慌てた様子のリリーが陛下に話しかける。
止めようと思ったが、王族の前で無礼なマネができなかった。
「たしかに私の方が評価されることは多いですが、それはあくまでお姉様が私を立ててくれているだけです」
「どういうことだ?」
「私は後妻の娘のため、外から入ってきた人間です。そんな私を周囲に認めさせるため、お姉様はわざと自分の評価を下げているのです」
「ふむ」
リリーの言葉に陛下は顎に手を当てて考える。
この展開はまずいかもしれない。
「それは誤解です。リリーが純粋に優秀なので、周囲が評価しているのです」
「お姉様は私のことを気にしてくれる優しい人なのです。だから、私のために」
私に被せるようにリリーも発言する。
思わず睨み付けてしまうが、リリーは笑みを浮かべる。
「はははっ、喧嘩するほど仲が良いみたいだな。良い娘が二人もいて羨ましいな、公爵」
「恐縮です」
陛下が笑いながら、お父様に声をかける。
どうやら陛下から私への評価を下げることはできなかったようだ。
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