2-9 元悪役令嬢は王族に挨拶をする
「さて、行こうか」
「どこに?」
お父様の言葉に私は聞き返す。
といっても、流石にどこに行くのかわかっている。
「挨拶にだよ。うちは公爵家だから、最初の方に挨拶をするんだ」
「お姉様、わかっていて聞いたでしょ?」
リリーにはバレていたようだ。
正直、挨拶なんてしたくなかった。
といっても、公爵令嬢という立場上、王族に挨拶をしないわけにいかない。
「はあ、仕方ないか」
「仕方ない、じゃないと思うわ」
面倒そうな私にリリーが呆れる。
どちらが本当の公爵令嬢だろうか。
まあ、現状はどちらも本物なわけだけど──
そんなことを言いながらも、私たちは王族の元へと向かった。
「陛下、ご無沙汰しております」
「おお、オラシオン公爵か」
お父様が声をかけると陛下が嬉しそうな表情を浮かべる。
そういえば、昔から公私ともに親交があると聞いたことがある。
王族と公爵家ならあり得る話である。
「王子殿下もお誕生日おめでとうございます」
「公爵、ありがとう」
お父様のお祝いの言葉にアレク様も感謝の意を伝える。
どこか少し偉そうな雰囲気があるが、これがお父様がわがままだと言った理由だろうか?
まあ、子供ならおかしくはないレベルだろう。
「ほう、その二人が公爵の自慢の娘かな?」
陛下の視線が私たちに向く。
それに合わせて、周囲の視線も私たちに集中する。
品定めをされているような感じが気持ちの良いものではない。
だが、公爵令嬢である以上、こういう視線からは避けられない運命である。
「初めまして、国王陛下。オラシオン公爵家の長女、ロータスと申します。この度はご子息の誕生日、おめでとうございます」
「次女のリリーです。この度はおめでとうございます」
私とリリーは並んで挨拶をした。
流石にこの状況で挨拶をしないほど、常識知らずではなかった。
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