1-2 元悪役令嬢は再会に感動する
「落ち着きましたか、お嬢様?」
「う、うん」
ホリーの言葉に私は頷く。
恥ずかしさで顔から火が出そうである。
いい年した貴族令嬢が泣きながらメイドに抱きつくなんて、とても周囲に言えることではない。
彼女にはしっかり黙っていてもらわないと・・・・・・
「貴族令嬢としてしっかりする──なんて言っていましたが、そんな調子では駄目じゃないですか?」
「う・・・・・・」
彼女の指摘に私は図星をつかれる。
おそらく今の私は5歳前後の年齢である。
どういう理屈かわからないが、目覚めたらこの姿になっていた。
正確に言うと時間が巻き戻っているのだろう、ホリーの姿が若返っていることから推測できる。
この当時の私は勉強を始め、貴族令嬢としてふさわしくあるべく行動しようとしていた。
今までのような子供っぽい行動を恥ずかしく思っていたはずだ。
「まあ、私としては嬉しいですけどね。可愛らしい妹がまた戻ってきたみたいで」
「ホリーっ!」
嬉しさのあまり再び抱きついてしまった。
幼い頃に母親を亡くし、家庭内に甘えられる相手もいなかった私にとって彼女は母であり、姉のような存在だった。
抱きつくことで彼女の優しさを感じることができる。
しかし、そんな時間も長くは続かない。
「ですが、今はそれよりも・・・・・・」
「え?」
ホリーによって、無理矢理引き離される。
いきなりの出来事に呆けた声を漏らしてしまう。
「もうすぐ朝食の時間です。身だしなみを整えましょう」
「・・・・・・わかったわ」
私は仕方なく納得する。
彼女の仕事は私の世話をすることである。
身だしなみを整え、朝食を取らせることで健康的な生活を送らせることも含まれる。
彼女に迷惑をかけたくないので、私は従うしかない。
あの温かみは名残惜しいけど・・・・・・
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