1-22 元悪役令嬢は義母のために頑張ろうとする
「といっても、その幸せも簡単に崩れちゃったんだけどね。適応能力が高くても、流石に病気には勝てないわ」
「・・・・・・」
悲しげな表情を浮かべるお義母様に私は何も言えなかった。
家族を失う気持ちは理解できる。
「ロータスちゃんもお母様を亡くしているのよね。思い出させてごめんなさい」
「いえ、大丈夫です」
私の反応で気を遣わせてしまったようだ。
別にお義母様は悪くない。
「私も少し面識があるけど、素晴らしい人だったわ」
「母を知っているんですか?」
少し驚いてしまう。
お義母様は母にとって婚約者を奪った張本人である。
応援していることは知っていたが、新人メイドが他家の公爵令嬢と面識があるとは思えない。
「専属メイドだったから、当時は婚約者だった彼女と会うこともあったわ」
「なんとも気まずい空気になりそうですね」
想像しただけで不安になってしまう。
そんな私の不安が的中する。
「何度目か忘れたけど、彼女に対して私のことが好きだと言われたわ」
「えぇ・・・・・・」
思わず引いてしまう。
一体、叔父は何をしているのだろうか。
普通、婚約者を相手に堂々と好きな人がいると言うか?
「まあ、最初からわかっていたみたいで、彼女とは大した問題にならなかったわ」
「それは良かった・・・・・・のかしら?」
私は首を傾げる。
たしかに大した問題にはなっていないが、それはあくまで結果論である。
叔父の行動がおかしいことにはかわりない。
「彼女自身もオラシオン公爵家の人間と結婚できれば問題はなかったから、気にする必要はないと言っていたわ。むしろ、こんな人間に好かれて大丈夫か心配してくれたわ」
「まあ、そう思うのが当然ですよね」
今までの話を聞いて、否定できなかった。
人様の旦那を悪くは言いたくないが、残念ながら味方になれない。
「でも、良い人ほど早く亡くなっちゃうのよね。主人も、ガーベラ様も」
「お義母様」
悲しげな彼女の様子に私も共感する。
たしかに二人とも良い人ではあったが、今は亡くなっている。
「ロータスちゃんは長生きしてね」
「・・・・・・はい」
少し考えてから、私は返事をした。
前世で私は若くして亡くなってしまった。
その記憶が長生きできるかを不安にさせる。
だが、彼女のためにもできる限りのことはしようと思った。
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