1-21 元悪役令嬢は叔父のことを見直す
「そこからが大変だったわ」
「え?」
しかし、話はそう簡単には終わらないようだ。
お義母様は話を続ける。
「その一件で先代公爵様にバレてしまったの」
「なるほど」
大変の理由が理解できた。
そういえば、お父様も祖父が反対していたと言っていた。
「私はメイドをクビになって、市井で働くことになったわ」
「そうなんですか?」
知っている内容と違い、驚いてしまう。
駆け落ちをした、と聞いていたのだが──
「駆け落ちじゃない、って思ったのね」
「はい」
「実際は酒場で働いている私の元に公爵令息という立場をすべて捨ててきたあの人がやってきたのよ。公爵家の人間からすれば、駆け落ちのように見えたのかもね」
「そうだったんですね。でも、それからは大変だったんですよね」
身分を捨て愛に生きるのは美談かもしれないが、実際に生きていくのは大変だっただろう。
公爵令息がいきなり平民の生活をできるとは思えない。
「それが意外と上手くいっていたのよ」
「へ?」
予想外の答えに驚いてしまう。
そんな私の反応にお母様は微笑む。
「適応力が高い、と言うのかしら? 基本的に要領の良い人だったから、すぐに平民の生活に馴染んでいたわ。しかも、すぐに私よりも稼ぐようになっちゃって、贅沢しなければ彼の稼ぎで過ごせるようになっていたの」
「意外ですね」
「リリーを身籠もっていたから、ありがたい話ではあったわ。妊娠中は働くことは難しいから、彼の収入を頼るしかなかったし」
「たしかにそうですね」
いろんなことはあったが、二人にとって平民生活は悪くないものだったのだろう。
人生、何が幸せかわからないものである。
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