1-20 元悪役令嬢は義母のメイド時代を聞く
「私も最初は驚いたわ。新人メイドが公爵令息の専属になるなんて大抜擢、周囲もざわついたわ」
「そうですよね」
「あとで主人に聞いたわ。自分のそばにいるのはクレア以外に考えられない、ってね」
「それはプロポーズの時に言う言葉では?」
疑問が口から出てしまった。
叔父からの好意は理解できるが、その結果が専属メイドにするのはどこかずれている気がする。
そもそも同じ屋敷にいるんだったら、専属にする必要はない気がする。
「たしかにそうよね。そもそも、その当時には言われてないわ」
「じゃあ、何も知らずに専属としての仕事をしていたんですか?」
「流石に好意を持たれているとはわかっていたわ。でも、本気には考えていなかった」
「どうして?」
二人は駆け落ちするほど相思相愛だったはずだ。
お義母様からも愛情があったと思っていたが・・・・・・
「当時の私は平民出身の新人メイドだったから、貴族の方からすれば珍しいんだと思っていたの。だから、好意も一時的だと思っていたわ」
「ああ、なるほど」
彼女の考えも理解できる。
たしかにその立場だと、本気で好かれているとは思えないだろう。
むしろ、なんらかのいたずらを疑うレベルである。
「流石に一緒にティータイムをしたり、話すときに照れたりされたら、その好意も本気だとわかったけどね」
「意外とわかりやすかったんですね」
裏で手を回したりする割に、叔父は顔や行動には出るタイプだったようだ。
わかりにくい人よりは良いかもしれない。
「まあ、良いことばかりじゃなかったけどね」
「え?」
「平民出身のメイドが公爵令息に惚れられたのよ? 他のメイドからすれば、嫉妬を抱いても仕方がないわ」
「ああ、そういうことか」
女性の嫉妬についてはすぐに理解できた。
前世の私も嫉妬していた側の人間だからだ。
嫉妬されていた側でもあるけど──
「私物が隠されたり、メイド服が濡らされたり、破られたり──本当にいろんなことをされたわ」
「大変だったんですね」
「すぐに対処はされたから、そこまで大きな被害はなかったわ。主人だけじゃなく、執事長やメイド長も味方をしてくれたから」
「それは良かった」
そこまで酷くなくて本当に良かった。
彼女は周囲の人に恵まれていたのだろう。
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