1-19 元悪役令嬢は義母の馴れ初めを聞く
「そういえば、聞きたかったことがあるんです」
「何かしら?」
私からの問いかけにお義母様は嬉しそうにする。
少し不躾な質問になるが、これなら答えてくれそうだ。
「旦那さん──私の叔父とはどういう馴れ初めだったんですか?」
「へっ⁉」
思わぬ内容だったのだろう、お義母様は驚きの声をあげる。
そして、恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。
私も嫌がらせでこんな質問をしたわけではない。
メイドだった彼女が公爵令息だった叔父と恋に落ち、結婚まで至った。
前世のリリーのことも合わせて、何かの突破口になると思ったのだ。
「言い辛いことでした?」
「い、いえ、そんなことはないわ。ただ、ちょっと予想外だっただけよ」
「なら良かったです」
不躾すぎたかと思ったが、そこまで酷くはなかったようだ。
お義母様は気持ちを落ち着かせるように呼吸を整える。
「元々、私はオラシオン公爵家で雇われていたメイドの一人だったの。その当時は入ったばかりの新人で、毎日が新しいことの連続で仕事としてのやりがいはあったけど、流石に疲れることもあったの」
「まあ、当然ですよね」
公爵家のメイドならば、当然その仕事も多いだろう。
新人として慣れない状況なら、疲れていても仕方がない。
「そんなとき、私はここから見える庭園で休んでいたの」
「ああ、あそこですか」
お義母様の指し示す場所を窓から眺める。
そこにはオラシオン公爵家自慢の庭園があった。
季節ごとに咲く花が変わり、どんな季節でも楽しめる場所である。
といっても、前世の私に花を楽しむ余裕はなかったけど──
「そこで主人と出会ったの。彼もまた疲れていたわ」
「疲れていた?」
「次期公爵として、周囲から期待と羨望、嫉妬とかいろいろ感じていたみたい。それが彼にとってはしんどかったみたいよ」
「なるほど」
叔父の気持ちはよくわかった。
私も周囲から同じように色々思われていたはずだ。
疲れたと思うことだって、一度や二度ではなかった。
「理由は違えど、同じように疲れていたから私たちは気が合ったの。時々、庭園で愚痴をこぼし合っていたわ」
「そういう出会いだったんですね」
「それから1ヶ月ぐらいかしら、専属メイドに指名されたの」
「なんでっ⁉」
予想外の展開に思わず令嬢らしからぬ声が出てしまった。
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