1-1 元悪役令嬢は目を覚ます
「っ⁉」
目を覚ました瞬間、私は驚いた。
正確に言うと、目を覚ましたことに驚いたと言うべきだろうか?
「ここは・・・・・・私の部屋?」
バッと体を起こすと、懐かしい光景が目に入った。
しかし、少し違和感があった。
私の知る自室とは少し違っているような・・・・・・
「お嬢様、お目覚めですか?」
「えっ⁉」
いきなり声をかけられた──いや、その声に驚いた。
「どうしたんですか、お嬢様? そんな幽霊を見たような表情をして」
「ホリー? どうして貴女が・・・・・・」
目の前にいたメイド──ホリーの姿を見て、私は思わず声をかける。
彼女は暴漢に襲われそうになった私を庇い、死んでしまったはずだ。
それなのに、元気な姿で私の目の前に立っていた。
むしろ少し若返っているぐらいだ。
「お嬢様の専属メイドなんですから、いるのは当たり前でしょう。おかしなお嬢様ですね」
ホリーは少し呆れたような表情になる。
仕えている主人に対して無礼かもしれないが、彼女のこんな態度が私は嫌いでなかった。
遠巻きにされがちな私に対して、唯一気兼ねなく対等に話してくれるのが彼女だった。
もちろん、主人とメイドの関係としては間違いだっただろう。
しかし、彼女の存在が私の心の拠り所になっていたのだ。
「ホリーっ!」
「わっ⁉」
思わず彼女に抱きついてしまった。
自然と目から涙がこぼれる。
突然の私の行動にホリーは驚きの声を漏らしていた。
「ほりぃ」
「・・・・・・」
私を引き離すことはせず、彼女はギュッと抱き締め、頭を撫でてくれた。
そんな彼女の優しさに私は久しぶりの温かい気持ちになった。
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