1-15 元悪役令嬢はシンプルな格好になる
「あぁ、今日は疲れたわ」
夜になり、私はベッドの上に体を投げ出していた。
着ているのは残した3着のうちの1着である。
飾り付けの少ないシンプルなデザインである。
ちなみに残りの2着も同様だ。
「やっぱり楽ね」
思わずそんな感想を漏らす。
前世の時からずっと考えていた。
私の洋服やドレスはどれも着心地が悪い、と。
使われている布地は高級なものであり、公爵家の私にふさわしいものではある。
見た目もプロが作っているので、可愛らしかったり綺麗だったりと問題はない。
だが、装飾がゴテゴテであり、はっきりいって動きづらかった。
「お嬢様、はしたないですよ」
「いいじゃない、自分の部屋なんだから」
私の様子を見て、ホリーがたしなめてくる。
自覚はしているが、直すつもりはまったくない。
だって、これも私の求めていた生活なのだから──
「どうしたんですか、お嬢様」
「何が?」
「今まではオラシオン公爵家にふさわしい令嬢になる、とおっしゃっていたのに・・・・・・」
ホリーの疑問はもっともである。
前世の私は子供の頃から努力をしてきた。
それこそが義務だと思っていたからである。
しかし、今の私はそんな風に見えないはずだ。
「少し気張りすぎたと反省しているの」
「どういうことですか?」
「今までがむしゃらに頑張ってきたけど、そんな生活は楽しくなかったわ」
「まあ、そうでしょうね」
ホリーも納得してくれる。
兎にも角にも公爵令嬢としての勉強という生活はやりがいはあるかもしれないが、決して楽しいものではない。
できたことへの達成感や褒められたことへの嬉しさはあっても、それまでの過程に苦痛も多い。
そのせいで前世の私には余裕がなかったと思う。
「もう少し気楽に考えていこうと思うの。悪いことかしら?」
「・・・・・・いえ、そんなことはないです」
私の問いかけにホリーは少し考え、肯定してくれる。
彼女は賛同してくれると思っていた。
努力しすぎて、体を壊してしまう──前世の彼女に言われたことである。
ずっと近くで支えてきてくれた彼女だからこそ、私のつらさを理解してくれていたのだ。
「これからはホリーに心配をかけないようにするわ」
「お気遣いありがとうございます」
私は今の気持ちを素直に伝える。
前世の私はずっと彼女に心配をかけてきたのだろう。
少なくない負担も与えてきたはずだ。
ずっと味方であった彼女を少しでも楽にしてあげたい──これも私が変わる理由の一つだった。
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