1-13 元悪役令嬢は義妹にプレゼントする
「お姉ちゃんのお洋服、とってもかわいいね」
私を見て、リリーが褒めてくれる。
純粋に羨ましそうな表情だった。
「そうかしら?」
「うん、私の着ているのと全然違う」
自分の服と見比べ、彼女は落ち込んでいた。
たしかに彼女の服とは大きく違っている。
私にとっては普段から着ている服ではあるが、平民の彼女からすれば質の良いお高い服である。
「公爵家の令嬢になったのだから、リリーも買ってもらえるわ」
「本当に? 私、平民だったんだよ?」
リリーは不安気に聞いてくる。
平民として生活していた彼女にとって、欲しいものを手に入れることは難しいことだったのだろう。
だが、今の彼女は私と同じ公爵令嬢である。
「もちろんよ。貴女も公爵令嬢なんだから、しっかりと着飾らないと・・・・・・といっても、服を買わないといけないからすぐには難しいわね」
「・・・・・・そうだよね」
すぐには着飾れないことを聞き、リリーは落ち込む。
そんな姿に私は心が締め付けられる思いだった。
思わず彼女の味方になりたくなった。
「安心しなさい。私のお洋服を貸して・・・・・・いいえ、あげるわ」
「え、良いの?」
私の提案にリリーは驚く。
まさかこんなことを言われるとは思わなかったのだろう。
しかし、私にとってはおかしな提案ではなかった。
前世の私はこんな提案をしなかった。
それが直接的な原因ではなかったと思うが、【義妹を冷遇する悪役令嬢】というレッテルの一端にはなっていたと聞いた──牢屋で捕まっている時に。
あんな未来にならないため、私は彼女の希望を叶えてあげようと思ったわけだ。
「もちろんよ。そもそも私も服が余っているから、あげるぐらいなんてことないわ」
「ありがとう、お姉ちゃんっ!」
リリーが嬉しそうに感謝の言葉を言ってくれる。
前世で彼女の味方になった者達の気持ちがわかった気がする。
こんな可愛らしい顔で感謝されれば、ずっと味方になってあげたいと思う。
かつての私はそんな笑顔を見たことはなかったけど──
30bm・90ptを超えていました。
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