1-12 元悪役令嬢は義妹を案内する
「公爵家って、すごいんだね」
リリーはそんな感想を漏らす。
いきなり全部は覚えられないだろうから、すぐに使う主要な場所だけを案内した。
それでも彼女は十分に驚いていた。
「今回案内したのはほんの一部よ? 実際にはもっとたくさんあるんだから」
「本当に? 私の住んでいた家なんて、この屋敷の一部屋分ぐらいだったよ」
「え?」
今度は私が驚く番だった。
平民の住む家がそんなに狭いとは思っていなかった。
公爵家の一族だった叔父が生活できていたのだろうか?
「こんなに広いなんて、まさにお城だね」
「実際のお城はもっと広いわよ」
「そうなの?」
「ええ、もちろん」
私は頷いて肯定する。
公爵家の屋敷はたしかに広いが、それはあくまで貴族の屋敷としてである。
流石に城ほど広くはない。
王族が住むスペースの他に、仕える者達が働く場所もあるのだ。
屋敷にないこともないが、その規模は全然違う。
「お城って、そんなに凄い場所なんだね。いつか私も行ってみたいな」
「公爵家の一員になったんだから、いずれ行くことになるわ」
憧れるようなことを言うが、今の彼女にはそこまで遠い場所ではない。
たしかに平民にとっては縁遠い場所だとは思うけど──
「お姉ちゃんはお城に行ったことがあるの?」
「いいえ、まだよ」
リリーの質問にあっさりと答える。
前世では何度も行った場所だが、今世ではまだ行っていない。
あまり良い思い出はないので、行きたくはないけど──
「じゃあ、行くのが楽しみだね」
「・・・・・・ええ、そうね」
しかし、嬉しそうなリリーを否定することはしない。
むしろ彼女のおかげで私も楽しみではあるのだ。
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