1-11 元悪役令嬢は義妹の笑顔の価値を再確認する
「お母様」
後ろにいた少女がクレアに声をかけた。
まだ不安そうな表情を浮かべている。
初めて公爵家に来たのだから、不安に思って当然だろう。
「紹介しますね。娘のリリーです」
「リリーです。これからよろしくお願いします」
母親に紹介され、頭を下げる。
事前にそう言うように言われたのだろう。
しっかり挨拶できるのは素晴らしいことだ。
「初めまして、リリー。私はロータスよ」
「初めまして」
「ところでリリーは何歳かしら?」
「4歳です」
「じゃあ、私の方がお姉さんね。お姉ちゃんと呼んでくれるかしら?」
「ロータスお姉ちゃん?」
「っ⁉」
あまりの可愛さに衝撃が凄かった。
自分で呼ばせたが、想像以上だった。
前世の私は彼女に対する敵対心からそう呼ばれることを嫌がっていた。
しかし、今世では彼女との交流を深めたい。
「良かったわね。お姉ちゃんができたわね」
「うん」
母親の言葉にリリーは頷く。
その表情からはまったく邪気を感じられない。
前世で私を死に追いやった張本人とは思えない。
といっても、彼女が私を直接死に追いやったのかははっきりわからない。
彼女のことを嫌っていたが、傷つけたりしたことはなかった。
だが、彼女へ危害を及ぼしたことも罪状の一つに上がっていた。
そんな私を庇うような発言を彼女はしていた。
当時の私は受け入れることはなかったが──
「じゃあ、屋敷の中を案内するわ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
手を引くと、彼女は嬉しそうな表情をする。
やはり天使のような笑顔である。
彼女に惚れる男性が多いのは理解できる。
前世の私にとってまったく天使ではなかったけど──
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