1-10 元悪役令嬢は義母に押しつける
「お父様、発言良いでしょうか?」
「どうした?」
思わず手を挙げて、会話に乱入してしまった。
いくらなんでも家族になるのにこれでは問題だろう。
「初めまして、お義母様。ロータス=オラシオンと申します」
「は、はじめまして、ロータスお嬢様。私はクレアと申します」
挨拶をすると緊張した面持ちで彼女も返事をする。
前世とは違うが、彼女のこういう態度は変わらなかった。
公爵家の一員として、当時は彼女の様子に嫌悪感を抱いていた。
しかし、彼女の立場からすれば、当然の反応だったのかもしれない。
「これから家族になるのですから、私のことは呼び捨てで呼んでください」
少しでも歩み寄るため、私は笑顔で提案する。
義理とはいえ、娘をお嬢様呼びする母親がいるだろうか?
「そんなこと、できませんっ!」
しかし、クレアは激しく拒否をする。
まさかそこまで強く言われるとは思わなかった。
だが、私も引くつもりはない。
「これから家族として一緒に夜会に出るとき、お義母様は私のことをお嬢様と呼ぶつもりですか?」
「え?」
「オラシオン公爵家が後妻を迎えたという情報はすぐに知られるでしょうが、後妻と家族に距離があると思われれば、周囲に付けいる隙を与えかねないです」
「そ、それは・・・・・・」
私の説明にクレアは言葉を詰まらせる。
内容を理解できないわけではないだろう。
だが、自分の立場で受け入れて良いものか悩んでいるのだろう。
ならば、私にできることは一つだ。
「実のお母様が亡くなって、寂しかったんです」
「う・・・・・・」
上目遣いでクレアを見つめる。
彼女は思わず目を背ける。
よし、このまま押してみよう。
「娘として、甘えちゃだめですか?」
「わ、わかりました。私を母親だと思って、甘えてください」
「やったぁ」
あっさりと陥落した。
無理矢理かもしれないが、幸せな家庭にするのにこれで良かったのだ。
あとは──
「私のことはロータスと呼んでくださいね」
「え?」
私は笑顔で提案する。
クレアの表情は再び固まった。
だが、これも譲るつもりはない。
「娘扱いしてくれるなら、お嬢様呼びは駄目ですよね?」
「そ、それは・・・・・・」
「さあ、どうぞ」
「え、えっと・・・・・・」
「さあ」
「・・・・・・ろ、ロータス、ちゃん」
「お義母様っ!」
名前を呼ばれたので、私は勢いよく抱きついた。
無理矢理呼ばせた感はあるが、これから家族になるのに遠慮は無用である。
最初は驚いたクレアではあったが、抱きついた私の頭を優しく撫でてくれた。
これが家族なのか、私はその温かさが嬉しかった。
20bm、60ptを超えてました。
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