プロローグ 悪役令嬢と呼ばれた少女は最期を迎える
久しぶりの投稿です。
少し一話を短めに書いてみました。
「・・・・・・」
暗い部屋の中で私は黙っていた。
冷たい床で横になっているのに、起き上がることすらしない──いや、できなかった。
「ふふ・・・・・・惨めな最期ね」
水面に映る自分の姿に笑うしかなかった。
以前は美しい自分の姿を鏡に映していたのに、今の私は雨漏りで溜まった水たまりにみすぼらしい姿を映すだけだ。
痩せこけた頬や手入れの行き届いていない髪、ぼろきれを着ている姿はとても貴族令嬢とは思えない姿である。
すでに貴族ではないので当たり前かもしれないが・・・・・・
「悪役令嬢か・・・・・・」
断罪される直前、呼ばれた名前を口にする。
自分からそのような行動をしたつもりはない。
しかし、なぜか周囲は私のことをそう呼んだ。
貴族の令嬢としてふさわしくあるべく頑張ってきた。
勉学に励み、礼儀作法を身につけ、容姿も磨いてきた。
恵まれた環境にいた自覚はあるが、それに見合った人間となる努力は惜しまなかった。
「こんなことになるのなら、努力しなければ良かった」
後悔が口から溢れてしまう。
努力の先が一人寂しい惨めな最期なのは悲しすぎる。
こんなことなら・・・・・・
「最初から期待しなければ良かった」
後悔が次々と口から漏れる。
周囲から認められることが嬉しくて、期待される貴族令嬢を演じてきた。
だが、それは私が周囲から褒められることを期待していたからだ。
期待通りでなかったら、周囲はあっさりと私を切り捨てた。
そこからはどんなに頑張っても評価が覆ることはなかった。
「・・・・・・もう、眠い」
意識が徐々に遠ざかっていき、視界が徐々に暗くなってきた。
先ほどまで感じていた冷たさもなくなってきた。
体に力がまったく入らない。
こうして私──ロータス=オラシオン元公爵令嬢の18年の人生は冷たい牢屋で終わった。
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