2020年
すうには、彼氏ができており、俺も定職についた。
専門商社の営業事務というのは、正直楽だった。
正直営業職もできないことはないが、稼働に回すだけの体力温存のために俺は、この職種を選んだ。
しかし、ミスを連発したり、書類を数え間違えたり、上司から指摘されてもなかなかミスが改善されずまた、業務遂行能力が不足との理由で解雇された。
わずか、3ヶ月勤務のことだった。
思い出すのは、総務のマクロスFに登場するランカ・リーを彷彿とさせる髪型の美少女の瀧川さんのただ1人だけだ。
俺はどうにもこうにもやるせない気持ちで溢れて、またスロプロになる道を選ぼうとしたが、コロナウイルスの蔓延で俺はマスクを常に着用するようになった。
もちろん、周りの例外ではない。
そして、渋谷を歩いて思うんだ。
美女が増えた。とても美女が増えたように思える。
心臓発作が起きそうなほど可愛いお姉さんを見るたびに胸が引き裂かれるような感覚に陥る。
さて、そんな私が今日打つ台は、甘デジの海物語。
CRA海物語3Rが打てるのは、どうやらこの店ぐらいしかない。
俺は久しぶりにCRA海物語3Rを打ったが、ヒキが良かったのか15連して、店を出た。
店を出てからショートピースをふかす。
「・・・帰ったら西洋古代史でも読むか」と自宅のある、練馬のアパートに向かおうとしたが、その時ラインの通知が鳴った。
「久しぶりにサシ飲みしない?」
それは紛れもなくすうからのラインだった。
「よう、すう久しぶり」
すうは、以前会った時よりもますます美少女になっていた。
「あ、ドアじゃん久しぶり」
「取り敢えず居酒屋入ろうか?」
渋谷のとある居酒屋に入った。
「すう、何飲む?」
「とりま、生」
「おっさんかよw」
俺は、生ビールとペプシコーラを注文した。
今日のすうの格好は、オフィスカジュアルといったところだろう。
「すう、ガルバ店長やめたの?」
「うん。てか、店潰れたから今は事務とアイドルやってんだ」
「アイドル?」
「声がでかい!スカウトされてさ、16歳ってことで売り出せ!ってことでアイドルと会社員の掛け持ち生活?
たかしは、今も現役ニート?」
「ニートじゃなくてスロプロな
そうなんだ、アイドルやってんだ。」
「みにぃみにぃってグループ。明らか地下なんだけどね。あとたまにその事務所?が抱えるコンカフェにも出勤してる」
「へー、てか彼氏とはどうよ?」
「あー、別れた。なんかやっぱつまらんなくてさあいつ。
しかも結局心下半身だし。別にいいけど本当にあたしのことを愛してくれる人と付き合いたいなって思ってさ」
「へー、応援してるよ」
つまみの枝豆とおでんと焼き鳥が来た。
「てか、たかし、なんでペプシなの?」
「ペプシマンになりたくて」
「ペプシマンって?」
「これさ」
俺はペプシマンの画像をスマホ越しに見せた。
「えーなんか、…変質者?」
「失礼だなお前w」
「うそうそ、それよりさ、今度ライブ来てよ」
すうは、俺にライブのチケットを渡した。
「うん」
そしてライブが開かれた。
他の人のダンスはそんなに輝かなかったが、彼女はセンターで一番目立っていた、
推しもきっと多いだろう。
小さな会場ではあったが、客は多かった。
ただ、そんなことより、オタクたちのコールが耳障りだった。
ライブから2週間後、すうから電話がかかってきた。
「どうだった?ライブ楽しかった?」
「一体感があるように思えた。」
「ねえねえ、てかうち地上アイドルになるかもしれん」
「おう、頑張れ。応援してる」
「もし、テレビとかに出るようになっても、私のことを応援し続けてくれる?」
「もちろんさ!」
すうのことは、その後もいちアイドルとして応援し続けた。
交際の噂が流れたりすることもあるが、正直どうでもいい。
ヘーゲルやデカルト全集を読んでる方が、有意義に思える。
すうは、童顔だし、可愛いからきっと他の男と行為に至る可能性も十二分にある。
だが、私は哲学者である。
故に、すうの行動には干渉しないし、すうが他の男を好きになろうがどうでも良い。
現時点で俺が好きな女が1人いる、ガルバ店員のあいか。
彼女の鼻は高い…というよりかは、大きい。
奥行感があり、全体的なボリュームがある。
彼女の鼻を触りたいがために僕は気がつけば、彼女に陶酔していたが、やはり僕はパチンコのように白黒結果がわかったほうがいい。
どうも、営業スマイルなのか本音なのかの判別がつきづらい。
そして、7月のある日、俺は今日もファンキージャグラー2を打った。結果は、負けた。
というか4万負けだ、失業中の僕からするとあまりにも痛い。
専業というのは偽りだ、僕は自分自身を専業だと言い張りたいだけだ。
さらに追い討ちをかけるように、強い焦燥感並びに不安が脳裏を過ぎる。
このまま自分は死んでしまうのではないかと。
その後はコンビニのアルバイトとして働くことになった。
こうして、フリーターとして生きる傍ら、遊びもせず修行とも言える2年が過ぎた。
店長はパワハラ気質だし、逆は低俗な凡人ばかりだし、給料はなかなか上がらないが、それでも毎日聖書を読み、毎日神に対する祈りを欠かさず行っていた。
人生の暗黒期と呼べるこの2年は自分の中で空白の2年と呼んでいる。
だが、空白の2年を過ぎた後、新たな幸福が見えると信じていた。
そして、2022年俺はIT企業の転職が決まった。