プロローグ
十数年にも及ぶ戦争が軍のクーデターで終結した。 これはクーデターが成功した直後から私が記録し続けたお話。 あの惨劇を繰り返さない為に奔走し続けた人々のお話。 どうか後世の人にこの思いが伝わります様に。
私の名前はエレノア。 エレノア・スコイアット。 軍に所属する医者兼科学者。 私が住んでる国は遂最近まで隣国と数十年にも及ぶ戦争をしていた。 長きにわたって戦争をしていた為両国の人口は大幅に減り、前線の兵士はどんどん低年齢化していきついには10代前半の子供まで送られて来た。
互いの国境線沿いの戦場は取っては取り返されを繰り返しを幾度と経て荒れ果て瓦礫と荒野が広がり台地には幾十万、幾百万もの人の血が大地に染み込み植物は枯れ尽くし草木一本生えぬ不毛の地へと変わり果てた。 されど両国の首都たる都はそんな現場を悲惨さを一変たりとも感じさせぬ豪華絢爛を誇り王族や貴族は贅沢な生活を謳歌していた、民達を犠牲にして。
戦場を知らぬ王族や貴族は現場、戦場には誰一人と視察にも行かず兵器と兵士、僅かな食料を送り付け相手国領土を攻め墜とせと命令するだけ。 戦場からの陳情は一切合切無視されしまいには陳情を挙げた者は反逆罪で死刑される始末。 相手国側も現状は似た様な物だと見て居れば分かった。
送られて来た兵士達からの話では兵士を徴兵する為幾つもの村や町が無人と化し廃墟となったと聞いた。 似た様な話を何度も聞き、私が配属された師団長は貴族から派遣されてる監察官に気付かれる様に他の師団長と連絡を取り、更には相手国側の軍にも渡りをつけた。 師団長は慎重に事を進め遂に作戦を決行した。
最初に監察官とその配下にある者を師団で包囲し殺害。 その後相手国軍と現場での停戦協定を結び両軍は一斉に国境を離れそれぞれの首都、王都へ進軍を開始した。 国境に展開していた全11師団全てがその日王都へ向け進撃を開始した。 王都までの道中では話通り幾つもの無人と化した村や町を見た。 比較的大きな街に寄った際に10代と20代の兵士を其処で離隊させた。 私が居た師団の兵数は6割減となったがそれでもこれは師団長が鋼の意思で徹底して行われた。
各前線から他の師団と合流しつつ王都へ進軍を続けた。 合流した師団の中には戦力が2割ほどしか残っていない師団も存在したのには怒りと悲しみが胸に渦巻いた。 王都までの道中で私達の反乱に気付いた貴族軍が居たが歴戦の私達に飾りだけの貴族軍は呆気なく敗北。 中には私達に合流し物資の援助をしてくれた貴族達が居たがそのいずれも貴族位が低い貴族達だった。
そして全師団が集結し王都を完全に包囲し戦闘が開始された。 王都直轄軍は見た目だけは立派だが戦闘経験はゼロ。 一方の私達は数十年のベテラン。 更には道中で見て来た悲惨さを憤りを怒りを悲しみを胸に士気は滞る事を知らず戦闘開始後僅か2日目の午後には城門を突破。 4日目には王城を守る城壁を眼前にしていた。 王都に住む一般市民には家から出ない様に徹底して触れ回った。 王都市民は私達の苛烈さに怯え指示に従った為すんなりと王都内を進軍出来た。
王城を眼前に控え5日掛けて王都市内を完全に掌握した私達は遂に王城へ攻撃を開始。 王城に立てこもって居た直轄軍からの反撃は微々たる物で王城の門は破壊され兵が雪崩れ込み王城の各所を制圧して行き遂に王とその一族を捕えた。
捕えた王族と王侯貴族達は皆広々とした謁見の間に集められた。 集められた者は皆煌びやかな衣服を纏い、中には肥え太ってる者さえ居た。 集められた王族、貴族達は私達に聞いていて呆れる事しか出来ない事ばかりしか喚かなかった。 師団長が1人の首を切り飛ばすとそれも一切無くなった。 中にはそれを見て泡を吹いて気を失った者されも居た。
それから淡々と師団長が戦場の悲惨さ、王都までの現状を説いて聞かせた。 聞かされて居た王族、貴族達は皆顔を蒼くし震え上がった。 そして師団長王へ最後に質問をした。
「王よ、何故戦争を続けた。 国を疲弊させてまでこの戦争をする理由はあったのか?」
「その様な事も分からぬか。 この戦争は神から与えられた試練なのだ。 我が国がこの大陸の覇者になる為のな。 この戦争は聖戦なのだ、それを貴様は、貴様達は泥を塗ったのだぞ‼ 貴様達は今すぐにでも神殿に行き許しを請うが良かろう。 尤もその後儂が国家反逆罪で殺してくれるわ‼」
「世迷言を」
「何じゃと!?」
師団長は冷たい目で王を睨むと王の首を撥ねた。 それを見た他の王族や貴族達から悲鳴が上がったが師団長は無視し直ぐに王都にある4つの神殿へ行き全て司祭、神官達を捕え王城に連れて来る様に命令した。 集められた他の王族や貴族達は王城に併設された直轄軍の牢屋に、王城で働いて居た者達は広い部屋でいくつかのグループ毎に幽閉された。
連行されて来た神殿関係者達は謁見の間に集められ話を聞いたが神からの啓示だ、神託があっただのと言うばかりで話にならず師団長達は王国を滅亡へと導いたと神殿の上層部をその場で切り捨てた。 それを見た神殿関係者は一斉に許し乞い始めたが師団長が一喝するとそれも止んだ。 その後神殿関係者は王城に一番近い神殿に纏めて軟禁し後日個別に尋問する沙汰を出した。
翌日にはクーデターが成功し王族と王都の貴族全員を捕えた事が王都中に布告された。 更に隣国に向け和平への使者を送る事が告げられた。 各師団長はそれぞれ王族、貴族、神殿関係者の個別尋問を開始。 王城勤務の文官や女官達も質疑応答がされた。 また王城の各部署を徹底して調べ不正や賄賂、汚職に関わった者は徹底して処罰を下して行った。
また王都市民には徹底した食料分配制を行い余剰分は各地の疲弊した地域に送られた。 その事に王都市民から反発が起きたが兵達が戦場の事、道中の事を話し如何に王都市民が贅沢な暮らしをしていたのかを言い聞かせた。 それでも尚反発する者は連行し実際にその様を見せつけ連れ帰った。 それにより連れて行かれた者達から兵士達の話が事実だと広まり反発は程なくして収まった。
王都制圧から1月半後、隣国へ赴いた和平の使者が帰還し話を聞くと隣国もクーデターが成功し実権を抑えたので和平に同意するとの返事が齎された。 師団長達は再度使者を送り和平に向けて動き出し3か月後終戦協定と和平協定が結ばれ両国にて終戦宣言が為された。
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