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クラリアスノート  作者: ゆさ
第六章 『新生リセレンテシア』
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第六章 15 『予感』


挿絵(By みてみん)




ルナとキャロネ・エルハルテの戦闘は意外にもあっさりと決着した。キャロネが近接戦闘を得意としていないこともあり、数の有利により終始ルナ優勢であった。

数十分のインターバルを経て出番はヨシュアへと移る。



◇◇◇◇◇◇◇


「ロゼリア、ヨシュア・キリシュトルテという少年についての情報はあるか?」


「直接会ったことはない……が、剣の才は逸脱していると聞いたことがある。むしろそれ以外は才能に恵まれなかったと哀れむ声もあったかな。なぜそんな噂が流れてるかというと、彼はフェルズガレアで珍しく魔法を行使するそうだ」


「ほう……逸脱した剣の才能か、期待できそうだ。だが……」


「どうした?」


「いや、気にしないでくれ。こっちの話だ」


珍しくも表情を翳らせるミシェルの姿を見たロゼリアは、ほんの少し、安堵にも似た感情を抱いた。



◇◇◇◇◇◇◇


額に汗を滲ませる一人の少年は漆黒の鎧に覆われた大男と対峙する。

一雫の汗が丁度滴る時、戦闘開始の口火が切られる。


「──レト・ルクセア!!」


ヨシュアは魔法により自身の剣に、光のエンチャントを施すと勢いよく立ち向かう。

接近するヨシュアに対してブラッドは特大剣を構える。このまま正面から斬りかかったところで軽くあしらわれることは明白である。

ヨシュアは踏み出した右足が地面に接地すると同時に、体を半回転させる。


「──アクセト」


それは、初速から瞬時に加速させる魔法。

回転軸として右足を利用し、後方へ蹴り出す。超高速でブラッドの後方へ移動したかと思うと、自身の完璧な間合いでピタリと制止、ブラッドがヨシュアの方向を振り返る前に剣を振り下ろす。

変則的な一連の剣術にも思える様子は、加速魔法抜きにしてもヒトの限界に到達する程の卓越した動き。更に加速魔法を効率良く利用することで本来の限界を超えた剣術へと進化していた。


必中距離だ。

この一撃が通用するかは分からない。


──そして剣が触れる刹那。


意識から隔離されたように、目の前に巨大な鎖は現れた。

ブラッドは今も尚、正面を向いたままだった。


反応できなかったのでは無い。

反応する必要が無かったのだ。


ヨシュア自身、全力で剣を振り下ろしている。既に止めることは不可能だ。

地面から頭上へとクロスするように昇る鎖は、ヨシュアの攻撃を受け止めた。


見たことも無い禍々しい巨大な鎖は傷つくことも無く、ヨシュアを後方へ弾き飛ばした。


ブラッドはゆっくりと振り返るとヨシュアに歩み寄るように。


「…………オシイナ……」


ヨシュアはゆっくりと立ち上がる。

その様をブラッドは眺めていた。


許せなかった。

これだけ剣術を磨いても、見たことも無い異能に一切歯が立たない。


「──メラ・イグニス!! ──メラ・ウェントス!!」

「──メラ・アクア!! ──メラ・ラピス!!!」

「──メラ・トルトニス!! ──メラ・グラキエス!! ──メラ・ルクセア!! ──メラ・デネブレア!!!!」


ヨシュアは叫ぶように行使可能なあらゆる魔法を詠唱する。

低位権限魔法とされるソレはブラッドの特大剣に容易く相殺される。


「……ソレガオマエノヨワサダ。アキラメタモノニ、タカミヘトウタツスルシカクハナイ」


「……黙れ!!黙れよ!! お前に僕の何が分かる!?」


ブラッドは無言で間合いまで歩み寄る。

そして、特大剣を頭上へ振り上げると、


「──甘えるな。ソレはお前の力では無い」


ヨシュアにしか聞こえない程に小さく、低く渋い声色。

先程までの人間離れした声ではなく、ブラッドを語る男の本当の声。


その大男が言った意味を考えながら、空を見つめ特大剣に両断された。


ヨシュア・キリシュトルテvsブラッド。

ブラッドの勝利。

その後、アルテミシアはリテルクに難なく勝利した。



◇◇◇◇◇◇


レナ達はリゼとセシアの戦闘を見ていた。


セシアはリゼと同じく万能型のガーディアン。あらゆる魔術を使いこなしており、その強度もリゼを上回るもの。

それでもリゼが優勢だった。理由は異能の有無だ。


リゼが発現した『セト・レイナス』という異能。修練を重ねることでその効果が露になりつつあった。


不思議な光によって構築されたガントレット。その正体はリゼの行使可能な属性を付与できる特殊な武器と化していた。


「まるで属性を自由に変えられる武装だ。しかも詠唱する必要も無い。得意属性を付与することで、攻撃にも防御にも転じることができる。どれだけ起用なんだリゼは」


アルテミシアが感心する中、レナは直感で感じていたことがあった。


「レナ、どうかしたか?」


「いや、アルテミシアの武装という言葉が引っかかったんだ。正に武装。であれば、今のリゼの姿に少し違和感を感じた。」


「と言うと?」


「異能を完全に使いこなせているかと言う点は一旦置いておくが、リゼの"武装"にはまだ先があるのでは無かろうか。考えてみればガントレットは本来武器ではないだろう。」


「──っ?!」


アルテミシアはレナの言いたいことを理解した。

リゼの異能が不完全か、あるいは進化する余地があるとすれば、それは全身を覆う完全武装。

更には武器へと派生するのでは無いかと言う想定の話だ。


もし、そうなったと考えるだけで少し寒気がした。

それ程の可能性をリゼは秘めているのだ。



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