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クラリアスノート  作者: ゆさ
第六章 『新生リセレンテシア』
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第六章 4 『喧嘩上等』


挿絵(By みてみん)




リアにとってラクリマの消失は心に追い討ちをかけるように。

その光景を見て優しく笑みを零したことに戸惑いを隠せなかった。


理解出来ないという訳では無い。

ルミナの心情を理解するのが怖かった。



「なにを……笑って……」


弱く不甲斐ない相棒に愛想が尽きた。

そう言ってくれた方が余程良かった。


対等でなくても良い。私はどんなに弱く惨めでも、大切な人を守るために戦う決意があった。それはきっとルミナも同じだろう。


ただ、ルミナは大切な人を守るために"戦わせない"決意をしたのだ。

そのための決定的な一歩を前に安堵したように。


視線が高い。

──ああ、それは私が膝をついているからか。


「──リア。ごめんね」


ルミナはプラズマの剣を振り上げる。

リアは虚ろな表情でただ、その様子を見上げていた。


ラクリマ以外にもリアの戦闘手段は存在する。だが、ラクリマが先頭の最中に消失したと言うことは、戦闘する意思が消失下も同義である。それが例え意識的でなくとも、リアの心が戦うことを諦めているのだ。


刹那、赤紫の雷光はリアを包んだ。


──パリンッ。という音と共にリアが纏っていた青緑の結界は消滅した。


そして、ルミナはリアを置き去りにその場を離れた。




「流石のセンスと言うところだな。だが、良い戦いだったとは言えないかな。ルミナ、本当にこれで良いのかい?」


アルテミシアは通り過ぎる皆を呼び止めるように問う。


「何言ってるのさ。ただの模擬戦でしょ」


少女は振り返りもせず、ただそう答えるとアストルムへ戻って行った。



アルテミシアは小さくため息をつくと遅れてこちらにゆっくりと足を運ぶリアの側へ駆け寄る。


「……リア……ルミナは……」


「ルミナは何も悪くないです。私が弱いから、対等に戦うことでは守りきれないほどに弱いから。これはきっと私の問題なんです」


「そのことなんだが……」


アルテミシアが言いかけるが「ほんっと、めんどくさい女」とルナは呆れたように零す。


アルテミシアがキリッと睨むがルナの口が閉じることは無かった。


「戦場で生き残ることが当たり前になりすぎてるんじゃない? 意味不明なことでうじうじやってさ、一体何がしたいんだよ」


「……っ!! ルナに何が分かるの!!」


「だから分かんないつってんの。私達は生きるか死ぬかの世界にいるんだ。対等に戦いたいとか知るかよ。守られるもなにも無い、弱ければ死ぬ。強ければ生き残る。それだけでしょ」


食ってかかっている割には何処か説明的な言い回しだ。

そこでリアは気づく。


「……ルナ……もしかして慰めてくれてる……?」


「……ハッ、ハァ?! 違うし。めんどくさいから早くどっか行けよウジ虫!!」


「ウジッ!? いくらなんでも言い過ぎでしょ!!」


リアは耳を赤らめるとルミナが帰った方向へ走っていった。



「ま、ルナの不器用なサポートもあったし、多分大丈夫だろう。リアとルミナの問題は本人達に任せてこちらは続きといこうか」


アルテミシアは少し安心したように話すと、ルナは不機嫌そうに──フンッ、とそっぽを向く。


「レナとヨシュア、リゼとルナは一度戦っているし。そうだな……ヨシュアとルナ、いってみようか」


ルナは心底面倒くさそうに「えぇ……」と零す。


「なっ、なんだよ!! そういえば、お前最初から僕のことをバカにするような態度とってたよな!?」


「バカにしてると言うか、興味無いというか……容姿も性能も全てがレナの足元にも及ばないくせにアホみたいにつっかかってたし、なんと言うかさ……正直いって、超ダサいって感じ」


ルナは吹き出すのを堪えるように答える。

プライドの高いヨシュアは顔を真っ赤にして今にも爆発しそうだが、何かを思い出したようにスっと冷静になる。


「レナレナうるさいな、そう言えばアストルムに来たばかりの時、手合わせでリアに勝ってなんか言ってたっけ……僕耳が良いから聞こえちゃうんだよね」


「何が言いたいんだよ」


確かにその時にヨシュアが聞いていたのは事実だ。

それを元にブラフをかけた。感情的なルナは根拠など気にせず煽れるのではないかと考えたのだ。


「いや別に。ところで、女の恥を捨ててレナに詰め寄ったのにあっさりフラれたってほんと?」


三ヶ月以上もの間一緒に暮らしているのだ。レナとルナの関係が進展していないことなど簡単に分かる。

そしてそれは、リアとレナの関係性を見ても一目瞭然だったのだ。


「──あ゛゛?」


ルナは反射的に聞いた事の無いような低い声でギロリとヨシュアを睨む。

余程ヨシュアの煽りが効いたのだろう。


「おいおい……君達は喧嘩しないと模擬戦できないのか……? やる気満々なのは良い事だが……」


ヨシュアとルナはレナに結界を付与してもらうと戦闘位置へ歩いていく。




「最初から全力で潰すから。ビビって漏らすなよクソガキ」


「女の癖にそんなんだからレナにフラれるんだよ。淫乱ババァが」


ルナは舌打ちすると不気味な笑顔を見せる。

カサカサと折れた枝葉が地面を通り過ぎる。


「──まじブチ殺す」

「──開始!!」


ルナの暴言とほぼ同時にアルテミシアの合図によりルナとヨシュアによる模擬戦は開始した。




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