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クラリアスノート  作者: ゆさ
第六章 『新生リセレンテシア』
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第六章 2 『慢心』


挿絵(By みてみん)




クラリアスとしてガーディアンになるべく生み出された二人の少女は対峙していた。

今までも修練で刃を交えることはあったが、模擬戦とは言えど勝負をつけるのは初めてのことだ。


「戦うのは良いけれどさ、どうすれば良い? 私は近接特化って訳でもないし、寸止めとかできないけれど」


「もちろんだ!! 分かっているとも。私が考え無しに模擬戦をしようと提案するとでも思っていいるのか?」


「「……」」


満場一致で思っているらしい。

アルテミシアはそんな雰囲気に気づいたように、頬を僅かに染めるとコホンと咳払いする。


「本番とまではいかないが、体表に魔力結界を構築する魔道具を入手した!!」


ルナは「そんな貴重なものを……」と呆れたように零す。ルナの表情を見たアルテミシアは何故か嬉しそうに、


「なんとこの魔道具、何度も使えるんです!! すごいねっ!!」


「何度もってそんなわけ……そもそも結界魔晶石だって異常な程高価だっていうのに、一体どうやって入手したんだよ……」


「アウレオ様がくれたんだ。アウレオ様曰く、普通の人間には扱えない失敗作だとか」


「だめじゃんそれ!!」


「ルナ、なぜ結界魔晶石が高価なのか分かるかい?」


「よく分からないけれど、希少な魔石だからじゃないの?」


「それもあるが、結界魔晶石は魔力を注ぐことによって完成するらしい。問題はその注ぐ魔力の量だとか。要は手間がかかると言うことだな」


「そうなんだ。で、アウレオ様が作った失敗作の魔道具はどれくらい魔力を注げば使えるの?」


「さすがルナ、察しが良くて助かるよ。今回の模擬戦で使用するレベルの結界を想定するならば、私が枯渇するまで魔力を注いで一人分と言ったところかな」


「だからだめじゃんそれ!! って、ああそうか。レナに魔力を注いで貰うんだね」


「その通りだ。レナであれば全員分の結界分魔力を注いでも大したハンデにもならないだろう。ってことでレナ、よろしく」


アルテミシアは複雑な模様が刻まれた手のひらサイズの立方体をレナに渡す。

魔力を込めると模様は淡い青緑の光を明滅する。しばらくすると光は次第に強くなっていく。

そして、アルテミシアはリアをレナの元に誘導する。


「こんなもので良いだろう。それをリアに渡せば結界が構築される」


リアは「へ?」と言いたげな表情で言われるがままに魔道具を受け取る。明滅していた光が一瞬にして消滅すると、リアは青緑の淡い光を纏う。


「レナ、大丈夫?」


「全然問題ない」


「今に始まったことではないが本当に規格外だな……っと、じゃあルナの分もよろしく」


アルテミシアは若干引き気味な反応を見せるが今更である。レナは肯定すると再び魔道具を利用し、ルミナの結界を構築した。


「これで準備完了だな。この中では私とレナを除けば、生身に全力で撃ち込んでも軽傷で済むだろう。万が一問題がありそうであれば止めに入る。では二人とも全力で戦ってみると良い」



リアとルミナはお互いの顔を確認すると小さく頷き空地の中心へ歩いていく。

最も大切な人だからこそ本気で戦う覚悟があった。

どちらも手を抜かれることが嫌いだと理解しているからだ。


思い過ごしに感じた、心のどこかで一度真剣に戦ってみたいという感情。

こうして対峙することで思い過ごしでないことがはっきりとした。


静かに揺れる木々は二人の感情を映すように。

不思議と落ち着いているが、開始の合図を心待ちにしている自分がいた。



「──開始!!」


リアはアルテミシアの合図を引き金にラクリマを顕現させる。

ルミナの戦い方は分かっている。基本的には中距離からの攻撃と範囲攻撃が主で、近接に使える異能は少ない。

唯一近接武器として扱えるのは、ヴァレ・エレクリアットで顕現する魔力由来の短刀。その派生のヴァレ・エレクトで顕現する魔力由来の小刀。そのどれもが雷属性である。


そして、ルミナはラクリマを顕現することが出来ない。

この勝負私に分があるのは分かっていた。


だからこそ、ラクリマの顕現と同時に地面を蹴った。


「──グラド・エレクタス」


一直線に突進するリアの正面にプラズマの薄い壁が展開される。触れたものを溶解させる壁である。

性質上ラクリマで両断するのは厳しいだろう。だが、さほど大きくもない壁、回り込んでしまえば良いのだ。


薄いプラズマの壁越しに見えるルミナの口は動いていた。僅かな時間稼ぎから異能を詠唱する時間を稼いだと言うことだろう。

しかし、リアが回り込みルミナに攻撃を仕掛けるよりも早く近接以外の異能で迎え撃つことは不可能だ。ここで躊躇うことこそ、ルミナの狙いかもしれない。リアは勢いを殺さずに回り込むようにルミナに接近する。


「──ネオ・エストグラム」


ルミナの詠唱も完了した頃。

ラクリマの剣身は迫る。


──ごめん、ルミナ。


その一瞬、心のどこかで躊躇していたのかもしれない。

躊躇したから私の剣はルミナに届かなかったのだろうか。


否、この一撃は最初から届かなかったのだろう。



──ジリッ。ギリギリギリッ!!

耳を覆いたくなるような不協和音が鳴り響く。


──リアのラクリマはルミナの剣により受け止められていた。


それはリアも初めて目にする武器。

武器と言うより武器の形をした何か。ラクリマでないことは明白だった。


ラクリマでさえない剣は刃こぼれ一つせず、完璧にリアの一撃を受けきっていた。




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