表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラリアスノート  作者: ゆさ
第四章 『リグモレス』
41/132

第四章 6 『賢者の従者』


挿絵(By みてみん)





翌日早朝、アルトセラス第三簡易拠点を出発したアルテミシア達は、主要拠点へ向かっていた。


ネイトの話によると、そこで賢者の従者と合流することになっている。そして、アルテミシアの言っていた通り、多少の魔物と遭遇したものの、かなりスムーズに主要拠点に辿り着いた。



「これがアルトセラス主要拠点……なんと言うか、すごいね」


リアは感嘆の言葉をこぼす。今までの簡易拠点と規模が違うとか、栄えているとか、そういう話では無かったのだ。


「立派な建物ですね、クロスティア学院みたい」


先鋭的な建築物を前にリゼは立ち止まる。リセレンテシアも立派な建物は多く存在するが、クロスティア学院と今リゼ達がいる場所は異質感があったのだ。


「そうだな、クロスティア学院もそうだが、ここら主要拠点も上の連中が拠点造りに一役買って出ているからな。フェルズガレアでは見慣れない建築物もあるだろう」


アルテミシアはアストルディアのことを上と言い、オルフェイアを連中などと称する。ただの癖なのかもしれないが、あまり良い印象を持っていないのだろうか。


「そう言えば、賢者の従者とやらは何処にいるのだ? これだけ広いと、合流と言っても情報無しに見つけるのは骨が折れそうだが」


レナはふとそんなことを言う。レナの言うことはもっともである。普通は待ち合わせ場所を予め決めておくものだろう。

だが、その理由は程なく知ることとなる。



「……レナはお前か?」


背後から冷徹な少女の声が聞こえたのだ。それもすぐ後ろ、耳元付近で。


「──なっ?!」


慌てて距離をとるレナ。気を抜いてたとは言えど、ここまで接近されるまで気づけなかったのだ。だが、気づけなかったのには理由がある。その少女からは、敵意と言うものを全く感じなかったのである。


レナは少女の方を向くと、


「すまん、僕は君のような知人に心当たりが無いのだが、一体誰だ?」


美しい金髪のツインテールに黄金の瞳。その瞳を見たリアとルミナは目を見開いていた。

その黄金の瞳には刻印が刻まれていたのだ。それはティシュトリアの瞳に刻まれた刻印にどこか似ていた。

魔眼ではないその瞳が何を表しているか、二人にはすぐに理解できた。


「……僕はアステリア。主、アウレオ・アルヴァイスの命にてここに来た。レナは君だろう? そして君がリアか」


アステリアはレナを見た後、何故かリアの名を出した。アルテミシアの推測では賢者はレナを気にかけているという話だったが、それだけでは無いのだろうか。


「ああ、レナは僕だ。僕のことは賢者アウレオから聞いたのか?」


「そうさ。主は君のことを選ばれし者と言っていた。僕には良く分からないけれどね。僕はただ主の命に従い動くだけだ」


「私はアルテミシアだ。そこにいるのはリゼ、君がリアと言った少女の隣にいるのがルミナだ。同行感謝する、よろしく頼む」


「さっきも言っただろう。僕は主の命に従い動くだけだ」


アステリアは冷たく言い放つ。冷酷な瞳は一時、リゼを捉えたように見えたが気のせいだろうか。


その様子を気に食わぬ表情で見たルミナは、


「主の命ってなにさ? なぜリアの名前が出てくる」


ルミナが引っかかったのはそこだった。クラリアスを生み出した張本人がリアに何らかの関心を持っている。それが良い意味であると、ルミナに想像することは出来なかった。


「言うつもりは無いよ、クラリアスが理由を求めるな。心なんてものがあると思っているのなら、それはまやかしだよ」


ルミナの眉がピクリと動く。ルミナには分かっていた。ティシュトリア同じようにアステリアはクラリアスであることが。そして、そのクラリアスの中でも特別な存在であると。

自分達量産モデルとは違えど、感情は確かにある。

ティシュトリアの場合は、現実を突きつけることが自分達を救うことになると、そこまで考えて行動しているように思えた。そんな連中が、心はまやかしだと言う。


単純な話、気に食わなかったのだ。だから、刺激することにした。



「……ふっ。心なんてまやかしねぇ。さすが、使い捨ての人形を作った迷惑な奴の従者が言うと説得力がある」


「──ちょっ、ルミ……」


煽るルミナをリアが止めに入ろうとするが、途中で静止する。否、恐怖で動けなかったのだ。

先程までレナの位置にいたはずのアステリアはルミナに接する位置まで迫っていた。そして、右手に握られた赤黒い刀はルミナの首筋紙一重でピタリと止まっていた。

ルミナは一粒の汗を垂らすが、笑みを浮かべていた。その顔を仇を見るような形相で睨むアステリア。


ルミナはしたり顔でアステリアを見る。だが、内心かなり無理をしている。一歩間違えば殺されていただろう。


「心なんてまやかしなんじゃなかったの?」


「──黙れ」


アステリアは冷酷な声色で言い放つ。

まるで自分を見ているようだった。首筋に刀を当て、今も見えぬ何かと葛藤している。


心なんてまやかしだと、そう思えたらどれだけ楽になれるのだろうか。不幸にも私達はそういう運命に縛られた存在なのだ。


主要拠点のど真ん中でそんなことをするルミナ達の周りに人が集まり始める。


アルテミシアは慌てたように、


「と、とりあえず一旦落ち着こう、な? 出発は明日だ。アステリアも合流した事だし、宿でも借りて作戦会議と行こうじゃないか」


アステリアは静かに刀を下ろした。ルミナも少しほっとした様子を見せるが、珍しくもリアから怒りの視線を感じ振り返る。



「ルミナ? なんであんなこと言ったの? 私の為でも嬉しくないよ。ちゃんと謝って」


リアに怒られた。確かにさっきの行動は良くなかった。大半が八つ当たりのようなものだ。


ルミナは大人しくとぼとぼとアステリアの方へ歩いていくと、


「……ごめん」


すると、ふんっとそっぽを向くアステリア。



アルテミシアは早速仲間割れをして勘弁してくれという様子で宿の方へ誘導していくのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ