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クラリアスノート  作者: ゆさ
第四章 『リグモレス』
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第四章 3 『第二簡易拠点』


挿絵(By みてみん)





早朝、レナ達一行はアストルムを出立した。


リグモレス第一領域前の主要拠点は、リセレンテシア郊外東の土地カルドハイラル、西の土地エルドグラン、南の土地アルトセラス、北の土地リルデクライムにおける一番外側に各一拠点ずつ存在する。


レナ達が今回向かっているのは、南の土地アルトセラスに存在する拠点である。理由は単純で、アルティセラ大森林が存在する土地がアルトセラスだからである。


アルティセラ大森林には入らずに別ルートを通過していくのだが、そこまでの道を知ってることで比較的にそこまでは楽に到達できた。

アルトセラスにはレナ達目指す拠点以外にも簡易拠点がいくつか存在する。リセレンテシア郊外から拠点まではかなりの距離があるため、簡易拠点を利用して休息を取ることも可能である。


レナ達はその簡易拠点の一つ目はスルーし、二つ目の拠点で休息をとる予定だ。そこは目標の拠点まで約六分目に位置する。



「ここが第二簡易拠点だ。私一人であれば第三拠点まで行ってたところだが、あと一日あるので一旦休息としよう」


アルテミシアは息一つきらさずにそんなことを言う。レナも表情一つ変えていなかったが、リア達はかなり消耗していた。



「私にとっては余裕だが相変わらずレナはタフだな。どう言う身体の作りしてるんだ?」


アルテミシアは不思議そうな表情でレナの身体を観察する。アルテミシア自身どちらかと言うと身体能力自体が高いが、レナはそう見えない。華奢な身体で、戦闘すらしない普通の美人な女性と言われても納得できる外見なのだ。

異能を使う者の中には無意識に魔力を身体強化に使うものもいるが、レナはそのタイプなのだろうか。


「僕自身分からないことだらけではあるが、頭で想像した動きは大抵そのまま実行できる。余程無理をしない限り基本的に疲れないな」


「あはは、滅茶苦茶だな君は。剣聖にでもなれるんじゃないか」


「剣聖?」



「私聞いたことあります。アストルディアの王都アスティルフェレス最大の騎士団長に与えられる称号ですよね」


「よく知っているなリゼ。今や子供向けの物語に出てくるほど有名だからな。リグモレスには上の連中も探索に来たりするから噂程度に聞いたことがあるのだが、現在の剣聖は魔法は一切行使しないらしい。異端と蔑む者もいるが、その多くがその強さ故に支持しているらしい」


「最強の剣士ということか。魔法を行使しないとはどう言うことだ?」



「私も直接会ったことがある訳では無いからな、詳しくは知らないが、剣の使い手として現実離れした実力を有している。だとすれば、それは異能の力と考えるのが自然だ。つまり、魔法は行使できないのではなかろうか」


「アストルディアの騎士団長が魔法を行使できないのか。なんだか不思議だな」


アストルディアの上流階級の者達はその多くが魔法を行使すると聞いている。その話を考えると、最大の騎士団長が魔法を行使できなく異端呼ばわりされるのも頷ける。


「フェルズガレアの状況は悲惨だが、上も上で色々あるようだぞ。特に権力絡みの問題が山のようにあるらしい。そういう意味ではフェルズガレアのほうが安全とも言えるな」



「ではいい頃合いだし、そろそろ夕食でも食べに行くか」


アルテミシアは区切りの良いところで話を切り上げると提案する。簡易拠点はメインの拠点よりは遥かに規模が小さいものの、宿や飲食店等は普通に存在している。

立地や簡易結界を利用することで、魔獣などの侵入を防いでいるところがありがたい。個人の野営では必ず見張りが必要で、とてもでは無いが気が休まらない。


ただ、一つ問題があった。



「うげ……何この値段……」


夕食のメニューを見て絶句するルミナ。それもそのはず、リセレンテシアの相場の五倍はくだらない価格なのだ。


「場所が場所だ、仕方なかろう。私が出すから自由に頼んでくれ」


アルテミシアはさらっとそんなことを言う。流石アイズ階級、単独で依頼をこなしているだけの事はある。懐はとても暖かいらしい。


「やったー。じゃ、遠慮なく」


ルミナ達は目を輝かせ大量に注文する。そして、出された料理を次々に頬張る。その様子を満面の笑みで眺めるアルテミシア。

そして、ルミナの頭をふと嫌な予感が過ぎる。


ルミナは一匹の魚を咥えたまま制止すると、


「こぇってはぁんかいとがあっはりする?」


これって何か意図があったりする? そう尋ねたのだ。だが、時すでに遅し。


「いや、何も特別なことは無いとも。せっかくの遠征だ、ルミナ達も成長したいだろうとは考えている。だから、今日はよく食べて、良く寝て、明日に備えると良い」


ルミナは途中まで丸かじりしていた魚をぽとりと落とす。リア達もさっきまで幸せそうに頬張っていた様子が嘘みたいに一変していた。

レナは相変わらずの様子で料理を食べ続ける。


「なんだ、もう終わりか? あれだけ張り切って注文しておいて、私の懐も随分寒くなったものだ。あー、寒い寒い」


確かに五人分の料理を相場の五倍で、しかもアルテミシア一人で支払っている。ここまで大量に注文するとも思っていなかったのだろう。ひょっとしたら、アルテミシアの手持ちの資金はだいぶ減ってしまったのかもしれない。



「「「……はい」」」


「ん? どうしたんだみんな」


一気に大人しくなったリア達と未だにマイペースに食べ続けるレナ。



アルテミシアはそんな四人をいかにも嬉しそうな様子で観察する。実はかなり性格が悪いエルフなのかもしれない。



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