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クラリアスノート  作者: ゆさ
第一章 『荒廃した世界の中で』
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第一章 2 『アストルム』

挿絵(By みてみん)




荒れた戦闘の跡地に少女が二人。

巨大なゼノンとの戦闘の末、生存者した者は負傷したリアとルミナのみ。


生き残った二人はとある施設に配属されることになった。通常ガーディアンは施設に配属され、生活から任務まで、その施設の者と行動することが多い。


二人が配属された施設の名は『アストル厶』。



「リアー!! やったね、私達一階級昇進だって」


ルミナは嬉しそうに頬を緩ませる。


ガーディアンの階級は、セラフィス(最高階級)、アイズ(準最高階級)、ファースト(第一階級)、セカンド(第二階級)、サード(第三階級)、ステラ(見習い)となっている。


世界は大きく二つに分離されている。

天空に存在すると言われる上界、アストルディア。

リア達の住む下界、フェルズガレア。


ガーディアンの制度は、フェルズガレア最大のクロスティア学院が確立した。クロスティア学院自体がガーディアンの為に存在すると言っても良い。


フェルズガレアにおけるガーディアンの存在は、それほどに重要である。

ガーディアン無しではまともに生活すらできないほどに、この世界は枯れ、荒んでいるのだ。


現在の二人の階級は、第二階級のセカンドであったが、今回の戦いの功績により、第一階級のファーストへ昇進を果たした。



「うん。これは私達が守ることできた証なんだ。その事だけは、きっと本物だから」


リアはガーディアンの階級を表す制服の腕章に優しく触れる。


「そうそう。私達にとって、ガーディアンの階級なんて実力と評価を表す程度の意味しかないからね。バシバシ倒してついでに一番上の階級まで行っちゃおう!!」


ルミナの発言はクラリアスにとって正しい在り方であった。


頭では理解している、身体も動く。

それでも心の奥にかかった雲が消えない。


ルミナが少し羨ましかった。




◇◇◇◇◇◇◇



リアとルミナはアストル厶へ到着した。

一頻り荷物の整理を終えると、アストルムの管理人をしている者に呼ばれる。


「こんにちは、私はネイト・ストレシア。アストル厶の管理人をしている者よ。依頼で遠征に出ていて今いない子もいるけれど、簡単に自己紹介してくれるかしら」



「ファースト、クラリアスのリアです。よろしくお願いします」

「同じくファースト、クラリアスのルミナ。よろしくー」


ネイトは「ありがとう。リア、ルミナ。細かい話は後でよろしくね」と、二人を皆の元に誘導する。



「リア、ルミナ、よろしくね。私はリゼ・レグラント。二人と同じファーストの階級」


真っ先に声をかけてくれたのは、外見上同い年程度の一人の少女だった。

焦げ茶のセミロングに赤茶の瞳。

リアとルミナのように特徴的な目をしていない様子から、クラリアスでは無いヒトの少女であることが分かる。

初対面でありながら、リゼはどこか優しそうな、包容力のある柔らかな印象を受けた。


「私はクラリアスでは無いけれど、この子達はリア達と同じクラリアスだよ」


「アルテア……です」

「タリアです」

「メリエラ」


「アルテア、タリア、メリエラ。 うん、覚えた。よろしくね」


三人の顔を見たリアは確認するように名前を呼ぶ。

制服の腕章を見たところ、アルテアがファースト、タリアとメリエラはセカンドの階級のようだ。


「よろしくー」


ルミナのノリが軽いのはいつもの事だが、クラリアスに対してはその態度が顕著に出ていることが多い。

深い意味は無いだろうが、どこか興味無さそうな、そんなふうにも見えた。




◇◇◇◇◇◇◇



リア、ルミナがアストルムへ移動になってから数日の時間が経過した。


「リア、今日は洗濯をお願い」


リアの当番は洗濯だった。と言うよりは、リアがまともにできる仕事が洗濯くらいだったのだ。

別段リアが著しく不器用という訳ではない。アストルムで生活するガーディアンの家事スキルが高いのだ。

そう言い聞かせないと正直やってられない……。


洗濯一つとっても前回の施設に比べると、手間がかからない。

それは単純にアストルムに在籍するガーディアンの人数が少ないことに所以する。

ガーディアン階級を鑑みても、アストルムの体制は少数精鋭と言ったところか。


「うん。リゼも夕飯の支度よろしくね」


平静を装うが、少し口角が上がっていたかもしれない。

リゼの料理は想像するだけで表情が緩むほど絶品だと言うこと。その事が実はアストルムに来て以来、一番の衝撃だった。


リゼは「ふふふ。任せなさい」と、自信ありげに胸を叩いた。



ルミナはと言うと、部屋の掃除を行っていた。と言っても、鏡に付着した水垢を完全に落としたり、窓ガラスに着いた指紋を除去したり、なにか強いこだわりを感じる掃除の仕方ではあった。


ガーディアンの施設では、管理人が仕事の事務処理をするが、ガーディアン達は自らの生活を自分の力で賄っていることがほとんどである。


時には、ガーディアン候補の小さな子供の面倒を見ることもある。今まで施設での生活を不満に思ったことは一度も無い。

それは、リア達にとって生活は唯一と呼べる、ヒトらしく生きることのできる瞬間でもあったからである。


クラリアスである自分が、ヒトらしく生きることを願うのは傲慢だろうか。



リアはやるせない気持ちを胸に、部屋を後にした。





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