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クラリアスノート  作者: ゆさ
第三章 『アルティセラ大森林』
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第三章 1 『新生アストルム』


挿絵(By みてみん)





レナがアストルムに来てから一ヶ月程が経過した頃。

アストルムの自然豊かな修練所にリア達はいた。


「レナ、いくよ!! ──テラ・ルクセア!!」


リアが握るラクリマの切先から、神々しい七本の光柱が放たれる。レナの頭上で円柱状に囲んだ光柱はレナ目掛けて一点に収束する。


レナは一振の剣を握っていた。

その剣はどこにでもある凡庸日である。

だが、凡庸な一振りの剣が強力な魔力の塊を切り裂いたのだ。


──非凡な少年によって。


切り裂かれた光柱は霧散する。

その様子をルミナは口を開けてみていたが、我を思い出したように戦闘態勢に戻ると、


「──グラ・エレクシア」


レナを広範囲でより囲むように地面が振動する。

表面から数多の雷がジリジリと漏れだしていた。


刹那の間、レナは考えた。

この攻撃を避ける一番楽な方法は、空中に飛び上がり範囲外まで退避すること。広範囲に及ぶがレナの脚力であれば可能である。


だか、それこそが罠であるような気がしたのだ。


地面に対しこれだけ広範囲に強力な帯電が起きている。ただの範囲攻撃には思えない。

そして気づく。その範囲外に退避すること、すなわち飛び上がることこそが狙いであると。

ならば答えは簡単だ。地面を壊してしまえば良い。


レナは剣を地面に突き刺すと、


「──壊れろ」


すると、帯電していた地面にいくつもの地割れが起き、雷は行き場を失ったように消滅した。その様子を見るルミナは驚愕の声を漏らす。


そして、レナが地面から剣を引き抜こうとした瞬間。


「──ゼノ・エクスクァト!!」


準備をしていたリアが猛突進する。

ただの修練だ。味方相手にここまでの異能を使うこなど普通ではない。

それでも、その普通が通用しないほどに、レナは余裕だったのだ。


「……っつ!!」


甲高い金属音が鳴り響く。

ノイズは一切なく、鼓膜が破けるような高く大きな音。衝撃は鋭く硬い衝撃波がルミナとリゼを襲った。

レナは剣尖で、猛突進したリアのリクリマの剣尖をピタリと受け止めたのだ。


それでもリアの勢いはとまらず、


「──はぁああああ!!!!」


すると、ピキピキと音がした。

音が鳴り止んだ刹那、レナの握っていた剣は粉砕する。


レナはすぐさまリアを受け流すように体勢を整える。


「え、え、ちょっ、ああああああああああ!!」


受け流されたリアは勢い余ってレナの後方に突っ込んで行った。

三回転くらい転がって吹っ飛ぶリア。ラクリマは手から離れた時点で消滅する。



レナは「あー……ごめんリア」と、リアへ手を差し出す。


「いやいや、私こそ何やってるんだろう。ついムキになっちゃった」


砂まみれで微笑むリア。

その様子を見てルミナ達も集まってくる。


「とりあえずお疲れ様ー」


ルミナは不思議なものを見るような表情で、観察するようにレナを眺める。


「いやー、本当にどうなってるだろうレナは」


「でも、リアの一撃には叶わなかったよ」


レナは柄だけになった剣をルミナに見せて少し恥ずかしそうに答えた。


「いやいや、おかしいよ。それただの剣だよ? オリハルコンでも無ければ、強化された鋼鉄でさえない。アストルムに手練の剣士はいないから貴重な剣は置いてないし。 普通だったらリアのラクリマと刃を交えるだけでボロボロになるはずなんだけれど……」


大空洞にあった結晶ほどではないが、ラクリマは基本的に刃こぼれ一つしない。それは魔力によって生成された武器故の特性である。

無論、本人の魔力などに依存する性能ではあるものの、ラクリマは特に硬度が高いのだ。

魔力の消費を考慮しないとすれば、世界に数本クラスの剣より強固だろう。


「そもそもの話なんだけれど、魔術って切り裂けるものなの? 神話じゃ無いんだから……」


リゼも見かねてそんなことを言う。

確かに有名な神話であらゆる魔法を切り裂く神器がなんとかみたいな。仮にそれを事実だとして今目の前にあるのは凡庸の剣だ。


「神話は置いといて、無意識に異能を使ってるんじゃないかな。武器に対する付与魔術とか。そしたら強い方が弱い魔術に勝るのは納得できるけれど」


リアは冷静に判断する。


「異能か、一ヶ月学院で色々なことを学んだが結局魔術は使えなかったよ」


「いくら強いからって、一ヶ月で、ステラからファーストでしょ? やっぱりおかしいよレナは。単純な強さならファーストの域にも収まってないよね」


ルミナは珍しくよく喋る。

好奇心旺盛で、理解できないものはどうしても知りたくなるのだ。


レナのガーディアン階級は現在ファーストである。

リア達ファースト三人が束になっても平然としているにもかかわらず、ファーストの階級なのには理由があった。


ガーディアン階級は、ファーストとアイズの隔たりが最も大きい。

理由は単純で、判断材料が強さだけでは無いということ。一重に功績をたてることである。ガーディアンになり一ヶ月のレナにはいくら強くてもファースト止まりが限界だった。


「そう言えば、リゼが精霊がなんとかって言ってたよね」


リアは思い立ったように発言する。


「そうそう、今もずっとレナの周りには素精霊が集まってるよ」


「精霊がレナの回復の手助けをしていたのだとすれば、レナの強さに何か関係あるんじゃない?」


「確かに無関係では無さそう。ただ、私も精霊についてはあんまり詳しくないんだよね。アルテミシアさんがいればなぁ」


「アルテミシアさんって、例のとっても強い精霊使いのガーディアン?」


リアは残念そうにするリゼに聞いてみることにした。

以前のリゼの口ぶりから憧れの存在なんだろうと感じていた。


「うん!! ガーディアン階級はアイズ。単独任務が正式に認められている準最高階級だよ。任務以外にも結構色々な場所転々としてて、いきなり帰ってきたり帰ってこなかったり」


「なんかすごい元気そうな人だね」


リアは笑みを浮かべる。

アイズ階級なのはもちろんすごいが、聞いただけでなんともパワフルな人物であることが分かった。



「じゃあレナのことはそのアルテミシアさんが来たら聞いてみようか。疲れたし、そろそろ戻ろう」


ルミナは半ば強引に話をまとめた。

確かに精霊が関係するとすれば、クロスティア学院は当てにならなそうだ。

精霊契約とはそれほどに珍しい。有識者に聞くのが一番早いだろう。


修練を終えた四人はアストルムヘ戻ることにした。



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