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クラリアスノート  作者: ゆさ
第七章 『暗躍する者』
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第七章 6 『獣人の少女』


挿絵(By みてみん)



レクタートが点在する場所を、間違っても触れてしまわないように、気を使いながら進んでいく。

決して難しいことでは無いが、暑さにより些細な集中力を維持するのも正直もどかしかった。


ルミナは、「ねぇ、これいっそ全部破壊してから通っちゃダメなの?」と、今にでも痺れを切らしそうな様子である。

しばらく進むと、地形の変化が見られる土地へと辿り着く。


「かなり隆起の激しい山道?のようになってきたね」


ミシェルは物珍しそうに辺りを見渡した。確かに、山道と表現では優しすぎるものの、火山地帯か?と問われればそこまででは無い。そんな地形である。

だが、まだ植物は存在し、水辺のような場所もごく稀にだが、見当たる。


「そうじゃな……そろそろ、ルガルトセルクが近いと思うのじゃが……一番大きな水源を中心に村ができていたはずじゃからのう」


そんな中、アルテミシアの耳がピクリと動く。

耳を澄まし、怪訝な顔をしていた。


「……なんだ?」


数秒後、一際大きな悲鳴が聞こえた。

その悲鳴は、木々が茂る奥から響く高い声色。


さほど距離は離れていないことが予測できたため、レナとミシェルは真っ先に声の発生源へと向かった。全力の二人に、アルテミシアとルミナは到底追いつくことはできなかった。



レナはやや先に到着する。

そこは、木々を抜けた先、赤紫色のショートヘアをした小さな獣人族の少女は、短刀を地面に落下させたまま地に膝をついていた。

その理由は言うまでもなく、少女の体格の数倍はあるトカゲのような魔獣に囲まれていた。魔獣は、その大きな口から炎を迸らせ、今にも少女を燃やし尽く準備をしているようにも見えた。


刹那、レナは全ての魔獣を一振で両断する。間に合った、と一息ついた時、ミシェルは到着した。


「流石だね。まさか私が追いつけないとは思わ──」


言いかけるミシェルは、少女に近寄ると、一番近くに落ちていた、両断された魔獣の尻尾を蹴り飛ばした。

そして、その尻尾は遠くで大きな音をたて爆散する。


「──なっ?!」


レナは呆気にとられた表情で音のする方向を見ていた。

まさか分離した尻尾が爆散するなど、想像もしていなかった。


「ありがとう。助かった。まさか尻尾が爆発するなんて……」


「いいや、レナが駆けつけるのが一歩遅ければ大事になっていたかもしれないからね。それに私もまさか爆発するとは思わなかったよ」


「え?この魔獣のことを知っていたわけでは……?」


「知らんよ。アストルディアにこの類の魔獣はおらん。嫌な感じがしたから蹴り飛ばしたんだ」


「な、なるほど……」


嫌な感じがしたから死骸を蹴り飛ばす。

常人には到底できない芸当だ。


「で、獣人の少女よ。怪我はないかね?」


「……う、うん。ありがと」


少女が顔をあげると、ミシェルは考え込むように数秒間。


「……時に少女よ。名前を聞いても良いかな?」


「……レシア・イシュタル」


イシュタル、それは聞いたことのある家名だ。


「……ん? イシュタルと言ったかね? つかぬ事を聞くが、ロゼリア・イシュタルは知っているか?」


「……うん…………私の姉です」


静かに答えるが、レシアはどこか悲しげな表情をしていた。否、ついさっきまで、危険な目にあっていたのだから、当然のことではあるが、理由はそれだけにとどまらないような気がした。


「なんと!!まさかロゼリアの妹とこんなところで出会うことになるとはね。ロゼリアは今後レナに頭が上がらないな!!」


「確かに、似ているような気はするな……」


「──似ていません!!」


レシアは言い放つ。

物静かだった少女の突然の否定に、レナも驚く。


「すまない。何か気に触ることを言ってしまったようだ……」


「あ、えと……ごめんなさい……助けて頂いたのに……」


「と、とにかく無事でよかった。私はミシェル・アストレア。君のことを真っ先に救ってくれたのが、レナだ。レシアと呼んでも良いかな?」


「……はい」


「獣人族ということは、ラガルトセルクからここへ来たのか?」


「……はい」


「我々は訳あって、ラガルトセルクを経由する必要があるのだが、土地に詳しく無くてね。一応あてはあるのだが、現地のレシアが案内してくれるならそれに越したことはない。それに、レシアをきちんとラガルトセルクへ連れて行く必要もあるからね。もし何かあったらロゼリアに合わせる顔がないよ」


「…………分かりました」


レナとミシェルはレシアを助けた。一件落着なはずが、空気的には少し淀んでいる感じがした。特に、ロゼリアという単語か出ると、レシアの表情が翳るような……姉妹で何かあったのだろうか。


そんな空気をぶち破るように、ルミナは現れる。


「──到着!! 二人とも早すぎだってば、、どうなってんのほんと……」


「えっと、声の主がその少女で、なるほど。問題は解決したようだね。しかしこれは……?」


アルテミシアは不穏な空気を感じとったのか、腑に落ちない表情をしていた。


ミシェルから、経緯の説明があり、レナ達はレシアの案内でラガルトセルクヘ向かうことになった。



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