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クラリアスノート  作者: ゆさ
第七章 『暗躍する者』
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第七章 1 『作戦決行』


挿絵(By みてみん)




リセレンテシア中央闘技場が修復される中、リアの救出をすべく集まった四人は、作戦を練っていた。

救出の為に残った者は、レナ、ミシェル・アストレア、アルテミシア・クローリス、ルミナの四人。リゼ、ルナ・レステリア、ヨシュア・キリシュトルテ三名は、アストルムへと戻った。


一つ、大きな問題に直面していた。それは、一刻も早く救出に向いたいが、具体的な場所が分からないこと。エルドグランとリグモレスの狭間ということは、ゼルグ本人が語ったが、それまでの道のりも、"来れば分かる"と言う意味も、この"四人"の中には知る者がいない。


「さて、エルドグランについて、詳しく知る者はいるだろうか」


「ガーディアンとしての基礎知識程度ならね。エルドグランには火山地帯、フレムグラスが存在する。そこは四大精霊サラマンダーの土地とも言われている。また、その手前にはラガルトセルクという獣人族が拠点を置く土地がある、らしいよ。見たことはないけれどね」


「ルミナ、ありがとう。他には何かあるか? 直接的な情報でなくても構わない」


「四大精霊の話ともなれば……」


アルテミシアはレナに目配せする。

おそらく、アウラのことだ。アウラについては、武闘大会では念の為隠していたが、ここらが潮時だろう。


レナが呼びかけると、アウラは少し不機嫌な様子で姿を現した。


「わしは便利な辞書かナニかか?」


アウラは皮肉を言いつつも、素直に姿を現した。レナの申し訳なさそうな表情を見ると、「ま、やむをえん状況じゃな」と、肩をなでおろす。

そんな様子を横から見ていたミシェルはなんとも神妙な表情をしている。


「うむ、剣聖ミシェル・アストレアよ。どうした? 体調でも優れないか?」


アウラはからかうようにケラケラと笑う。


「レナが精霊使いだった。という事実は良しとして、あなたは一体何者だ? 精霊なのか?」


「そうじゃ。わしは四大精霊の一柱、風の大精霊シルフじゃ。アウラ、と呼ばれている。今はレナの契約精霊でもある」


「四大精霊……ああ、すまん。疑っているわけではないんだ。私は目で見たものは信じる質でね。精霊のことはあまり詳しくないが、四大精霊ともなればさすがに知っている。どうか協力を頼む」


「うむ。そのつもりじゃ。まず、ゼルグ・エインドハルグについてじゃが、わしは知らん。そして、あのドラゴンに関して、色々な説があるが、知っていることは一つのみ。古来より稀に出現するドラゴン、名をファフニールと言う。場所はある程度案内できるじゃろう。なんと言っても……ラガルトセルクの最深部には、火の大精霊サラマンダー、フレアがいるからのう」


アウラは少し嫌そうにフレイの名を語った。


「前も思ったんだが、アウラは他の大精霊と仲良くないのか?」


「うむ……わしらは仲が良いとか、悪いとかそのような関係性では無いが……あの女狐は正直レナに合わせ……」


もじもじと歯切れ悪く話すアウラだが、後半の方は正直何を言っているのか聞き取れなかった。


「え? なんだって?」


「ええい!! もう良いわ!! とにかく、ラガルトセルクから火山地帯フレイムグラスまでは楽に案内できるじゃろう。そこからは簡易拠点を経由していくのじゃが……ま、覚悟しておくんじゃな」


「なに?! またメルギトルとか言わないよね?? 」


トラウマを植え付けられたルミナの脳裏には、真っ先に憎き魔獣が浮かんでいた。


「メルギトルは本来リグモレスの魔獣じゃ。火山地帯と言ったじゃろう。とにかく暑いのじゃ。もう信じられないほどに」


「でも、ラガルトセルクには獣人族が住んで……ああ、そういう事か。一番過酷なのはフレイムグラスなんだね」


「故に、リグモレスへ行く際に、フレイムグラスを経由する者はほぼいない。アルトセラス経由で迂回する、と言う発想もあるが、そうすると一週間では間に合わんじゃろうな。ま、どちらにせよフレアには会う必要がありそうじゃ。あやつならゼルグのことも少しは知っているじゃろう」


「風の大精霊アウラよ、感謝する。とにかく、ラガルトセルクへ辿り着くことを第一目標としよう。必要な物は現地調達とし、一刻も早く出発とする」


こうして、四人によるリアの救出作戦は決行される。




◆◆◆◆◆◆◆




鎖に縛られた一人の少女は、目を開いた。

頬に伝っていた涙の感覚がまだ残っている。


薄暗い空間は、複数の灯火によって照らされる。


「おお、人形、起きたか?」


リアはゼルグをキリッと睨みつける。


「そんなに怖い顔するなって。ここの居心地は悪くないはずだ」


「……拘束した状態でそんなこと言われても説得力ない」


「カリカリするなよ。拘束はお前のためでもあるんだぜ? 自由にしたってオレは構わんが、お前が逃げようとしたら捕まえるしかねぇ。その時にちと、力を入れすぎて握り潰しちまうかもしれねぇからなぁ」


ゼルグは相も変わらず、歪んだ表情で高笑う。


「……お前が何を考えてるかわからない。でも、レナは必ず私を助けてくれる」


「ああ。オレもそれを望んでる。お前はその為のエサだ」

「──だが、お前は本当に、傲慢な女だ」


そう言い残すと、ゼルグは外へ出ていった。



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